相続税専門税理士の富山です。
今回は、贈与税の課税方式である「暦年課税」及び「相続時精算課税」の適用・選択と、その実務的な注意点について、お話します。
相続時精算課税と暦年課税、どちらも使える?
贈与税には、「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つの課税方式があります。
どちらの制度も使い方次第で相続税対策に役立つものなのですが、同じ贈与者からの贈与について、今年はこっちで申告し、来年はあっちで申告し、再来年はまたこっちで申告する、というようなことはできず、また、同じ贈与者からの同一年中の複数の贈与について、2つの課税方式を併用することもできない、という点に注意が必要です。
また、相続時精算課税制度を一度選択すると、その贈与者(特定贈与者)からの贈与については、以後はすべて相続時精算課税で申告しなければなりません。
これらは申告上の大きな制約であり、選択を誤ると、将来の相続税対策(資産移転計画)に支障をきたす恐れがあります。
贈与者毎に課税制度を選択する
相続時精算課税を適用したい場合には、相続時精算課税を選択します(選択する場合には、一定の要件があります)。
その選択は、贈与者毎に選択します。
相続時精算課税を選択しなければ、暦年課税が適用されます。
たとえば、父親からの贈与について相続時精算課税を選択したとしましょう。
この時点で、「父親からの贈与=相続時精算課税で申告」というルールが今後ずっと適用されることになります。
一方、母親や祖父母など他の贈与者からの贈与については、暦年課税(のまま)で申告することが可能です。
つまり、贈与者毎に課税制度を適用・選択し、相続時精算課税を選択したら、それ以後は暦年課税は適用できない、ということになります。
実務でよくあるトラブルとその回避策
暦年課税及び相続時精算課税の適用・選択に関しては、次のようなトラブルが起こりがちです。
久しぶりに贈与を受けた際、相続時精算課税を選択していたことを忘れて暦年課税で申告してしまう
複数の贈与者から毎年贈与を受けているものの、課税制度の使い分けの趣旨を忘れてしまい、ただ贈与を続けている(贈与が節税のために最適化されていない)
これらの問題を防ぐには、以下のような対応が有効です。
届出書・申告書控・贈与契約書等を年分別・贈与者別に整理保管する
税理士に毎年、課税制度の適用・選択及び贈与内容に問題がないか確認を依頼する
また、贈与者毎に考えるだけではなく、全体的な資産移転設計(複数受贈者の検討を含む)を行っておくことが重要です。
想う相続税理士
少しでも不安がある場合は、相続税に精通した税理士へ早めに相談し、家族全体の贈与・相続戦略をプロと一緒に描いていくことをおすすめします。