相続税専門税理士の富山です。
今回は、遺留分侵害額の請求について、お話します。
遺言があっても保障される財産の取り分がある
遺言がない場合、相続人間の遺産分割協議により遺産分けを行う、協議がまとまらなければ、家庭裁判所の調停などの手続きに進む、その場合には、原則として、法定相続分での遺産分けになる
遺言がある場合、基本的には遺言の内容に従って遺産分けを行う、相続人全員の同意があれば、遺産分割協議による遺産分けが可能だが、逆に全員の同意がなければ、必ず遺言のとおりの遺産分けになるのかというと、そうではない
相続人には、法律上取得することが認められている最低限の財産の取り分(「遺留分」)がある、遺留分に相当する財産を取得することができなかった場合には、他の相続人等に、その不足分を請求することができる
昔は「遺留分減殺請求」だった
この不足分の請求は、民法改正前だと「遺留分減殺請求」により、他の相続人等が取得した財産そのものを請求するスタイルだった、例えば、相続人Aさんが相続人Bさんに遺留分減殺請求をすると、AさんはBさんから相続財産の引渡しを受ける
その際、Bさんが先代から事業を引き継いだ社長で、その相続財産が事業用財産(同族会社の建物の敷地など)の場合、会社の事業運営に支障をきたす可能性がある(会社にとって重要な財産を渡すことになる、または、その財産が共有状態になるから)
遺留分侵害額の請求ならお金で解決できる
民法改正後(「遺留分侵害額の請求」)なら、BさんはAさんに、その不足分のお金を払えば決着できる、つまり、事業用財産を手放さずに済む、亡くなった方の「事業存続のためには会社に関係する財産は新社長(Bさん)に相続させたい!」という意思が叶えられる
遺留分侵害額の請求により、返還すべき、または、弁償すべき金額が確定した場合、それに合わせて相続税の申告をやり直し、払い過ぎた相続税の還付を受けることができる(期限は4ヶ月以内)
遺留分侵害額の請求により当初よりも相続税が増えるか、または新たに発生する場合には、修正申告や期限後申告をすることになる
モノで渡すこともできるけど・・・
上記のBさんにお金があればいいが、お金がなければ、Bさんが持っている財産をAさんに渡すケースもある
この場合、その財産が土地などの譲渡所得課税の対象となる財産の場合には、BさんはAさんに財産を売った(譲渡した)ことになり、Bさんは所得税を納めなければならない、遺留分侵害額の請求によって生じた債務の「代物弁済」に該当するから
想う相続税理士