相続税専門税理士の富山です。
今回は、相続税の申告に関し、税務署が通帳をどのような観点から見ているかについて、お話します。
ちなみに、税務調査では調査官が通帳を見せて欲しい、と言ってきますが、その時点だけの話ではありません。
税務署は、税務調査の前に、とっくに通帳のお金の動きのデータを入手してチェックしています。
多額の出金や目立つ出金がないか
口座から多額の出金や目立つ出金がある場合には、そのお金が「どこに行ったのか」「何に形を変えたのか」という観点からチェックされます。
目立つ出金というのはどういうものでしょうか?
一度に多額のお金が引き出されていなくても、コンスタントに出金されれば、まとまったお金になります。
金融機関のATMでは1日で50万円までしか下ろせませんが、1ヶ月下ろし続ければ、約1,500万円のお金を引き出すことができます。
その場合、通帳に毎日50万円の出金が記載されるので、かなり目立ちます。
そこまでではなくても、通帳を見てみて「これは何使ったんだろう?」と思われるようなものがないか、チェックしてみてください。
その出金されたお金が親族の口座に入金されている場合、それがどのような内容のお金なのかが問題となります。
贈与であれば、贈与税の申告がされているか、または、非課税枠内のため贈与税の申告が不要なのか、または、そもそも贈与として成立するのか、などがポイントとなります。
贈与として成立しなければ、その出金された金額は、名義預金や預け金として、亡くなった方の相続財産になります。
例えば、子供の名義の口座にお金を入金して、亡くなった方や親族がそれを贈与だと思っていたとしても、子供がその口座の存在を全く知り得ないような状態であったり、亡くなった方が口座を管理しているようなケースです。
どのような支払があるか(どのような支払がないか)
口座振替などの場合には、その引き落としの内容が通帳上の記載(印字)でもある程度分かります。
例えば、保険会社に支払があるのであれば、通常は保険料ですから、相続税の申告において、それに対応する財産計上がきちんとされているかがチェックされます。
自分に掛けた保険であれば「生命保険金」が計上されているはずですし、家族に掛けている保険があれば、「生命保険契約に関する権利」が計上されていないとおかしい、ということになります。
逆に、事前の調査で、「生命保険契約に関する権利」や「農協の建更のような積立型の損害保険契約」があるのに、その保険料の支払が通帳上に見当たらない場合には、保険料を現金で払っているということになります。
そうすると、「その現金はどうやって用意したのか?」「現金のタマリがあるのではないか?」「もしかすると申告されている口座以外の口座があるのではないか?」という見方をされます。
大きな入金があった後も要注意
お客様の通帳を拝見させていただくと、突発的な事情により口座に入金があった後に、そのお金がほぼそのまま引き出されることがよくあります。
生命保険金や満期保険金が支払われたり、不動産を売却して多額の入金があったり、会社を辞めて退職金が支払われたりした場合などです。
それらの入金額は、支払時に源泉徴収されたり、または、翌年の確定申告で税金を納めたりしているはずなので、「もうどう使ってもいいでしょ」という感じになりますよね。
確かに、どのようにお使いになっていただいてもいいのですが、その動かし方によっては、贈与税課税などのリスクが生じることをお忘れなく。
想う相続税理士
110万円を超えて贈与をしていれば、通常はそれがどんなお金でも、贈与税の課税対象になります。