【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

共同住宅と共同住宅の間の通路部分は私道評価できる?

相続税専門税理士の富山です。

今回は、2棟の共同住宅の敷地のうち、その2棟の共同住宅の間の部分の、入居者やその関係者のみが通行する通路となっているエリアを、私道評価することが可能かどうかが争われた事例について、お話します。

出典:TAINS(F0-3-814)(一部抜粋加工)
令03-12-08裁決


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特定の者の通行の用に供されている私道は安く評価できる

国税庁HP・タックスアンサー(一部抜粋加工)
No.4622 私道の評価
概要
私道には、公共の用に供するもの、つまり、不特定多数の者の通行の用に供するいわゆる通り抜け道路と、そうでないもの、つまり、袋小路のようにもっぱら特定の者の通行の用に供するいわゆる行き止まり道路があります。
このうち、私道の評価の対象となる宅地は、後者に該当するものです。私道であっても、前者に該当するものは、その私道の価額は評価しないことになっています。
私道の評価は、その宅地が私道でないものとして路線価方式または倍率方式によって評価した価額の30パーセント相当額で評価します。

特定の者の通行の用に供されている私道は、7割引きで評価(30%評価)することができます。

東棟と西棟の間に通路状の空地が設けられている

本件土地は、相続開始当時、本件各建物の敷地として利用されており、東棟と西棟の間には、通路状の空地(本件通路部分)が設けられている
本件各建物の敷地は、本件通路部分の有無にかかわらず、それぞれ建築基準法第43条第1項に規定する接道要件を満たすものであり、本件各建物の入居者及びその関係者以外に本件通路部分を日常的に通行の用に供している者はなく、本件各建物の敷地の位置関係や形状等に照らし、本件各建物の入居者及びその関係者が本件通路部分を通行の用に供している利用状況は、いずれも本件各建物の各部屋の賃貸借契約に基づくものであって、この賃貸借契約に基づく制約以外に本件各建物の敷地をそれぞれ他の用途に転用することを困難とする事情があるとは認められない。したがって、本件各建物の敷地の客観的交換価値の低下は評価通達26《貸家建付地の評価》による貸家建付地としての減額評価によって尽くされているといえ、本件通路部分について評価通達24による私道の用に供されている宅地として減額評価すべき客観的交換価値の低下を認めることはできない。
よって、本件通路部分について、評価通達24の前段の定めによる私道供用宅地として評価減することは認められない。

その通路部分は、確かに「特定の者の通行の用に供されている」と言えます。

誰が通るかというと、その共同住宅の入居者及びその関係者です。

裁決では「なぜ、入居者(及びその関係者)がその通路部分を通行の用に供するのか?」に着目し、それは「(共同住宅に入居するための)賃貸借契約に基づく」からだとしました。

私道が安く評価できるのは利用・処分に「制約」があるから

冒頭のタックスアンサーは、私道を「①公共の用に供するもの、つまり、不特定多数の者の通行の用に供するいわゆる通り抜け道路」と「②袋小路のようにもっぱら特定の者の通行の用に供するいわゆる行き止まり道路」に分類しました。

そのうち①は、個人の財産ではあっても、自由に利用・処分することが難しい状態になっているため、評価しなくていい、ということになっています。

それに対して②は、①ほどではないにしろ「制約」はある、ということになります(他人が使っていますからね)。

既に貸家建付地評価により「制約」が反映されている

当該通路部分は、努めて使用していない私有地が特定の者(通常は近所の人)の通行の用に供されている、という上記②のパターンではなく、共同住宅への入居のための賃貸借契約に基づいて入居者という特定の者の通行の用に供されている、というケースであるため、その「制約」は賃貸借契約による「制約」であり、財産評価上、それは貸家建付地評価による減額(例えば、借地権割合が40%であれば、40%×30%=12%評価減)でいいハズだ、としています。

想う相続税理士

結論としては、「東棟の敷地」「西棟の敷地」の2評価単位(それぞれ貸家建付地評価)ということになります。