相続税専門税理士の富山です。
今回は、親がお金を出して子供の名義で車を購入し、それが贈与に該当するモノとして、子供に贈与税が課税(決定処分)されたものの、贈与の事実を認定することはできないとして、贈与税の決定処分が取り消された事例について、お話します。
出典:TAINS(J100-4-08)
請求人の名義で登録された車両は、請求人の父がその資金の全額を拠出しており、贈与に当たるとして行われた贈与税の決定処分について、請求人に対する贈与の事実はないとして、贈与税の決定処分の全部を取り消した事例
名裁(諸)平27第6号
平成27年9月1日
購入資金拠出者と財産名義人が異なれば原則贈与
贈与事実(贈与があったかどうか)の認定は難しいため、相続税法基本通達には次のような規定があります。
相続税法基本通達
9-9 財産の名義変更があった場合
不動産、株式等の名義の変更があった場合において対価の授受が行われていないとき又は他の者の名義で新たに不動産、株式等を取得した場合においては、これらの行為は、原則として贈与として取り扱うものとする。
つまり、親が子供(他の者)の名義で新たに車を取得した場合、「原則として贈与になる」ということです。
やむを得ず他人名義で財産を取得した場合
税務は実態(実質基準)で判断します。
上記の「名義人=所有者」という考え方は、形式基準によるモノです。
他人名義で財産を取得した場合であっても、それがやむを得ない理由によるモノであり、(贈与の意思表示がない等)贈与が成立していないときは、贈与税を課税しないモノとして、次のような通達が定められています。
(他人名義により不動産、船舶等を取得した場合で贈与としない場合)
1 他人名義により、不動産、船舶又は自動車の取得、建築又は建造の登記又は登録をしたため、相続税法基本通達9-9に該当して贈与があったとされるときにおいても、その名義人となった者について次の(1)及び(2)の事実が認められるときは、これらの財産に係る最初の贈与税の申告若しくは決定又は更正(これらの財産の価額がその計算の基礎に算入されている課税価格又は税額の更正を除く。)の日前にこれらの財産の名義を取得又は建築若しくは建造した者(以下「取得者等」という。)の名義としたときに限り、これらの財産については、贈与がなかったものとして取り扱う。(昭57直資2-177改正)(1) これらの財産の名義人となった者(その者が未成年者である場合には、その法定代理人を含む。)がその名義人となっている事実を知らなかったこと。(その知らないことが名義人となった者が外国旅行中であったこと又はその登記済証若しくは登録済証を保有していないこと等当時の情況等から確認できる場合に限る。)
(2) 名義人となった者がこれらの財産を使用収益していないこと。
「贈与がなかったものとして取り扱う」ためには、一定期間内に財産を取得者等の名義にすることが要件となっています。
子供はその車をほとんど運転したことがなかった!
上記事例の裁決書から、ポイントとなったと思われる箇所をピックアップしてみます。
請求人(子供)は2、3回運転したことがあるだけで他に何もしていないだけで他に何もしていない
請求人(子供)が本件車両の名義人とされたのは、G社の従業員である請求人の名義で登録すれば装備品の優遇が受けられたから
請求人が平成24年4月以降dで生活するようになっても本件車両が父の自宅で保管されていた
本件車両は、父の判断によって平成26年5月に売却され、売却代金は父が受領した
請求人(子供)が、購入すべき車両の選定や購入手続等に関与した事実は認められない
上記の実態を鑑みると、名義人である子供のモノにはなっていなかった(実質的にお金を出した親のモノ)と考えられますので、確かに贈与はなかったと言えるでしょう。
想う相続税理士
相続税法(一部抜粋)
第21条の3 贈与税の非課税財産
次に掲げる財産の価額は、贈与税の課税価格に算入しない。
二 扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるもの