相続税専門税理士の富山です。
今回は、取引相場のない株式の業種目の判定について、お話します。
非上場会社の株式を上場企業の株価と比較して評価する
亡くなった方が、家族で経営している同族会社などの非上場会社の株式(取引相場のない株式)を所有していた場合、その株式も相続税の課税対象になるのですが、その非上場株式を評価するときは、「類似業種比準方式」というモノを採用する場合があります(部分的に採用したり、または、採用しない場合もあります)。
この方式は、「事業の種類が同一又は類似する複数の上場会社の株価の平均値に比準する方式」(国税庁HP)です。
ザックリ言うと、上場企業と比較して株価を計算するのですが、その際には、業種目(事業内容)を明確にしなければなりません。
それも、1つの業種目です。
では、事業を多角化していて、複数の事業を行っている会社の場合には、どのように1つの業種目に決めればいいのでしょうか?
複数の事業を行っている場合には取引金額ベースで業種目を判定する
財産評価基本通達(一部抜粋加工)
181-2 評価会社の事業が該当する業種目
前項の評価会社の事業が該当する業種目は、178《取引相場のない株式の評価上の区分》の(4)の取引金額に基づいて判定した業種目とする。
なお、当該取引金額のうちに2以上の業種目に係る取引金額が含まれている場合の当該評価会社の事業が該当する業種目は、取引金額全体のうちに占める業種目別の取引金額の割合(以下この項において「業種目別の割合」という。)が50%を超える業種目とし、その割合が50%を超える業種目がない場合は、次に掲げる場合に応じたそれぞれの業種目とする。(以下省略)
複数の事業を行っている場合、「取引金額ベースで50%を超えている事業があればその事業」等というように、取引金額ベースで判断します。
では、その取引金額は、いつの取引金額で判断するのでしょうか?
「直前期末以前1年間の取引金額」で判定するということは?
財産評価基本通達(一部抜粋加工)
178 取引相場のない株式の評価上の区分
(4) 評価会社が「卸売業」、「小売・サービス業」又は「卸売業、小売・サービス業以外」のいずれの業種に該当するかは、上記(3)の直前期末以前1年間における取引金額(以下この項及び181-2《評価会社の事業が該当する業種目》において「取引金額」という。)に基づいて判定し、当該取引金額のうちに2以上の業種に係る取引金額が含まれている場合には、それらの取引金額のうち最も多い取引金額に係る業種によって判定する。
国税庁HP・取引相場のない株式(出資)の評価明細書の記載方法等(一部抜粋加工)
⑴ 「類似業種と業種目番号」欄には、第1表の1の「事業内容」欄に記載された評価会社の事業内容に応じて、別に定める類似業種比準価額計算上の業種目及びその番号を記載します。
この場合において、評価会社の事業が該当する業種目は直前期末以前1年間の取引金額に基づいて判定した業種目とします。
いつの取引金額で判断するのかというと、「直前期末以前1年間」です。
ということは、相続税対策として、事業を多角化している非上場会社の株式を贈与する場合、会社の取引金額の割合が将来的に変動することが予想される場合には、その変動後に株式を贈与した方が安かった、ということが起こり得ます。
直前期末以前1年間ベースだと建築工事業の取引金額が50%超だけど、今期は不動産賃貸業の取引金額が50%を超えそうだ、という場合には、今すぐ贈与するのであれば建築工事業、来期に入って贈与するのであれば不動産賃貸業の会社として株式の評価額を計算することになります。
想う相続税理士
ただし、事業内容を大きく転換したような場合、例えば、極端な例としては、建築工事業のみを行っていた会社が、今期から不動産賃貸業のみを行うようになった、というような場合、来期に入って贈与する際、不動産賃貸業の会社として評価するのは問題があるモノと思われます(来々期等も同様)。