建物を相続した方がその建物の敷地に係る借地権も相続したとされた事例
夫が亡くなり、妻が亡くなった場合、夫の相続に係る相続財産のうち、妻が相続した分は、妻の相続財産を構成する
逆に、妻が相続しなければ、妻の相続財産を構成しない
夫の相続に係る相続財産の中に、借地上の建物があった場合、相続財産を構成するのは、「建物」と「借地権」だが、夫の相続に係る遺産分割協議書に、「建物」は妻が相続したと記載されているが、その「借地権」の取得者のついての明確な記載がなかった
出典:TAINS(Z257-10697)
(1) 借地上の建物の所有権が移転された場合には、特段の事情のない限り、それと同時にその借地権も移転されたものと推定するのが相当であるから(最高裁判所昭和47年7月18日判決、最高裁判所昭和40年5月4日判決参照)、遺産分割協議において、各相続人は、本件借地権を、本件建物の取得者に帰属させる旨の合意をしたものと推定すべきであるとされた事例
(2) 本件の亡夫の相続に係る遺産分割協議において、本件借地権を借地上の建物を相続した亡母ではなく、子である納税者に取得させるという合意があったことをうかがわせる特段の事情を認めるに足りる証拠はないから、納税者が同遺産分割によって、本件借地権を取得した旨の納税者の主張が排斥された事例
借地権は、建物の所有権の従たる権利(民法87条1項参照)として、これと一体となって一つの財産的価値を形成していることや、建物の所有権は、その敷地の利用権を伴わなければ、その効力を全うすることができない
(一部加工)
借地権とは、建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権のことをいうから(借地借家法2条1号)、建物の所有を目的とする土地の賃貸借においては、地上建物の所有者がその土地の賃借権を有するのが通例である。また、地上建物の所有権が売買、相続等によって移転した場合、特段の事情のない限り、借地権も地上建物の所有権に付随して移転すると解される。そして、本件土地の賃借権は、本件建物の所有を目的とするものであり、本件建物は、本件相続1により、A(妻)が所有しているから、特段の事情のない限り、本件借地権も、本件相続1により、A(妻)に帰属すると考えるべきである。
(一部加工)
原告甲(子)は、同原告(子)が、本件建物の固定資産税を支払っており、本件建物の賃料もC(建物を業務で使用していた会社)から取得していたと供述する(原告甲本人6頁以下)が、仮にそのような事実があったとしても、A(妻)が本件遺産分割協議によって本件建物を取得したという前記認定は左右されず、借地権の帰属の上記推定も左右されない。