相続税専門税理士の富山です。
今回は、相続の専門書を読んでいて思ったことについて、お話します。
死亡日の23時59分59秒の残高
国税庁が公表している「相続税の申告のためのチェックシート(令和5年1月以降提出用)」を見ると、
区分 | 検討項目 | 検討内容 | 検討資料 |
相続財産 | 現金・預貯金 | 相続開始日現在の残高で計上していますか。(現金の残高も確認しましたか。) | 預貯金・金銭信託等の残高証明書、預貯金通帳等 |
と書かれています。(一部抜粋)。
例えば、令和5年10月31日にお亡くなりになった方の相続税の申告書を作成する場合、金融機関に行って「令和5年10月31日(相続開始日・死亡日)現在の残高の残高証明書を発行してください」とお願いするハズです。
令和5年10月31日午後1時にお亡くなりになった方がいて、A銀行の普通預金の残高が、前日(令和5年10月30日)時点では1,000万円だったとします。
相続人の方が令和5年10月31日午前11時に100万円をおろしていたら、その100万円分残高証明書の記載残高が減ります(残高900万円)。
相続人の方が令和5年10月31日午前11時ではなく、午後2時に150万円をおろしていたら、残高証明書の記載残高はどうなるでしょうか?
その150万円分だけ記載残高が減るのでしょうか?
亡くなった時点(午後1時時点)では残高は減っていません。
この記載残高は減っているハズです(残高850万円)。
「令和5年10月31日(死亡日)現在の残高の残高証明書を発行してください」とお願いすれば、令和5年10月31日(死亡日)の「最終」残高が記載されるハズだからです。
つまり、令和5年10月31日(死亡日)23時59分59秒の残高です。
「金融機関は、亡くなった方の除籍謄本の『【死亡時分】』の時刻を確認して、その時刻における残高証明書を発行しなければならない」なんてことになったら大変です。
亡くなった時点の残高じゃなくていいの?
相続税法には、次のように書かれています。
相続税法(一部抜粋加工)
第22条 評価の原則
この章で特別の定めのあるものを除くほか、相続、遺贈又は贈与により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価により、当該財産の価額から控除すべき債務の金額は、その時の現況による。
「取得の日」ではなく、「取得の時」における時価ですから、A銀行の普通預金については、午後1時時点の残高で申告しなければならないのでしょうか?
財産評価基本通達(一部抜粋加工)
財産の評価については、次による。
(2) 時価の意義
財産の価額は、時価によるものとし、時価とは、課税時期(相続、遺贈若しくは贈与により財産を取得した日若しくは相続税法の規定により相続、遺贈若しくは贈与により取得したものとみなされた財産のその取得の日又は地価税法第2条《定義》第4号に規定する課税時期をいう。以下同じ。)において、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額をいい、その価額は、この通達の定めによって評価した価額による。
「課税時期」を「相続、遺贈により財産を取得した日」としています。
厳密な死亡時点(何時何分何秒)とはしていません。
つまり、死亡日の「最終」残高でいいのです。
通帳は必ず確認する
上記の午前11時に100万円をおろしたパターンの残高900万円の残高証明書、午後1時に150万円おろしたパターンの残高850万円の残高証明書、ともにその残高をそのまま申告するだけではダメです。
おろしたことにより、前者であれば100万円、後者であれば150万の「現金」が手元にあるハズです。
その「現金」をキチンと申告しましょう。
想う相続税理士秘書
想う相続税理士