相続税専門税理士の富山です。
今回は、駐車場の敷地所有者である父が、その駐車場のアスファルト舗装部分を子に贈与し、その駐車場収入を子に帰属させるのは認められない、とした裁決事例について、お話します。
出典:TAINS(F0-3-897)(一部抜粋加工)
令05-06-13裁決
アスファルト舗装だけを贈与することはできない
本件被相続人は、平成26年1月25日、請求人との間で、本件各土地上に敷設されたアスファルト舗装、車止め及びフェンスを請求人に贈与する旨の契約を締結した(以下、上記アスファルト舗装部分を「本件各舗装部分」、上記贈与契約を「本件贈与契約」という。)。
本件贈与契約に係る贈与契約書には、上記の各贈与物件上において営む「駐車場賃貸借契約」については、受贈者(請求人)がその地位を引き継ぐこととし、本件被相続人は、「当該賃借人各人からの預り保証金全額」を受贈者に現金で引き渡した旨の記載がある。
当審判所の調査の結果によれば、アスファルト舗装は、路盤にアスファルト混合物を敷きならして、転圧機械により所定の密度が得られるまで締め固め、所定の形状に平坦に仕上げるものであり、アスファルト舗装された地面のうち、アスファルト混合物が含まれる表層及び基層部は、土地の構成部分となり、独立の所有権が成立する余地はないというべきである。そうすると、本件贈与契約のうち本件各舗装部分の所有権を請求人に移転させることは原始的に不能であることは明らかであるから、本件贈与契約のうち本件各舗装部分を対象とする部分は無効であると解される。
土地を贈与するのは大変だけど(贈与税が高くなるけど)、土地の上のアスファルト舗装部分(「アスファルト舗装」は「構築物」という財産です)だけを贈与するのであれば、贈与税はそんなにかからないハズです。
しかし、それはできない話であり、贈与契約自体が無効だ、とされました。
なぜアスファルト舗装だけを贈与しようとする?
本件各取引がなされた経緯についてみると、本件使用貸借契約を含む本件各取引を行い、被相続人が従前から営んでいた賃貸料収入の蓄積による被相続人名義の将来の遺産の増加を抑制することを企図するとともに、当面の所得税等の節税も企図したものであることが認められる。
土地(更地)という財産の上にアスファルト舗装(構築物)という財産があり、そのアスファルト舗装が駐車場収入を稼いでいるのであれば(車が停まっているのはアスファルトの上であり、更地の上ではないですからね)、そのアスファルト舗装を子に贈与したら、その駐車場収入もアスファルト舗装の(新しい)所有者である子のものになる、という理屈になります(通用しなかったけど)。
そうすると、駐車場収入がどんどん入ってきても、父の財産(将来の相続財産)を増やすことなく、また、父の収入(所得)を増やすこともないので、相続税や所得税等が軽減できそうですが、それはダメ(贈与自体が無効)とされました。
子の収入(所得)ではなく父からの贈与
本件使用貸借契約による使用貸借がされたとする日(平成26年2月1日)の前後において、本件各土地の駐車場としての利用状況や、管理業者を介しての管理状況自体に特段の変更があったとも認められないことも併せて考慮すれば、本件各取引は、被相続人の相続に係る相続税対策を主たる目的として、被相続人の存命中は、本件各土地の所有権は飽くまでも被相続人が保有することを前提に、本件各土地による被相続人の所得を子である請求人に形式上分散する目的で、請求人に対して本件使用貸借契約に基づく法定果実収取権を付与したものにすぎないものと認められる。
したがって、本件各駐車場収益を支配していたのは被相続人というべきであるから、当該収益について、請求人は単なる名義人であって、その収益を享受せず、被相続人がその収益を享受する場合に当たるというべきである。
そして、被相続人に帰属する本件各駐車場に係る賃貸料収入が請求人名義の預金口座に振り込まれ、請求人がこれを受領し請求人の財産が増加していることは、相続税法第9条に規定する「対価を支払わないで、又は著しく低い価額の対価で利益を受けた」場合に該当するというべきである。
駐車場の敷地となっている土地について、使用貸借契約(親から子へのタダ貸し契約)が締結されましたが、それでも駐車場収入は子には帰属しない(父の収入であり、それが子に贈与(みなし贈与)された)と認定されました。
想う相続税理士