【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書の及ぶ範囲

相続税専門税理士の富山です。

今回は、相続人の中に「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を提出した人と提出しなかった人がいる場合の取扱いについて、お話します。

出典:TAINS(資産課税課情報R050600-007)(一部抜粋加工)
資産課税課情報 第7号 「資産税質疑事例集」 令和5年6月作成


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最初に提出するのは「申告期限後3年以内の分割見込書」

遺産分けが決まらないと、相続税の申告において、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減等を適用することはできません(一部遺産分けが決まっている場合には、その一部については適用できます)。

遺産分けが決まらなくても相続税の申告は待ってもらえませんので、上記の特例等を適用しない状態で、いったん相続税の申告をすることになります。

その申告の際、相続税の申告書と一緒に「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出しておけば、3年以内に遺産分けが決まった場合に、上記の特例等を適用して相続税を再計算(更正の請求等)することができます。

3年以内に遺産分けが決まらなかったらもうダメ?

では、相続税の申告期限後3年以内に遺産分けが決まらなかった場合、上記の特例等は適用できないのでしょうか?

そのような場合には、「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を、相続税の申告期限後3年を経過する日の翌日から2ヶ月を経過する日までに提出しておけば、上記の特例等を適用できる可能性を残すことができます(承認を受けなければ適用できません)。

承認申請書を提出しなかった相続人がいたらどうなる?

甲さんが亡くなり、その相続人は乙さん・丙さんの2人です。

相続税の申告期限後3年を経過しても遺産分けの話し合いがまとまらなかったため、乙さんは「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を期限内に提出したのですが、丙さんは提出しませんでした。

遺産分けの話し合いがまとまり、乙さんがA土地を、丙さんがB土地を取得しました。

どちらの土地も小規模宅地等の特例の適用要件を満たしています。

この場合、乙さんが承認申請書を期限内に提出しているので、乙さんが取得したA土地だけは小規模宅地等の特例を適用できるのでしょうか?

それとも、乙さんが承認申請書を期限内に提出しているので、丙さんが取得したB土地についても小規模宅地等の特例を適用できるのでしょうか?

それとも、丙さんが承認申請書を期限内に提出していないので、乙さんが取得したA土地についても小規模宅地等の特例を適用できないのでしょうか?

特例対象宅地のうち乙が取得した部分については、小規模宅地等の特例の適用を受けることができる。
特例対象宅地のうち丙が取得した部分については、小規模宅地等の特例の適用を受けることができない。

A土地には小規模宅地等の特例を適用することができますが、B土地には適用できません。

その前提で再計算(更正の請求等)をすることになります。

承認申請書をちゃんと提出しても、認められず却下される(却下書の通知を受ける)場合がありますので、ご注意を。

想う相続税理士秘書

想う相続税理士

相続税は全体の財産に対して計算されますので、乙さんが提出した承認申請書が認められるかどうかで、乙さんの相続税が変わるだけではなく、丙さんの相続税も変わります。