不動産の鑑定評価採用時の注意点
上記の記事で、財産評価基本通達に従って計算した評価額が、時価よりも高いと感じた場合、不動産鑑定士に鑑定評価をしてもらうのも手、とお話したが、不動産鑑定士に鑑定評価をお願いすることを検討する前に、その「時価よりも高い」が妥当かどうかを検証する必要がある
例えば、近隣で土地取引があったのであれば、同じエリアではないにしても、その土地取引の取引金額をベースに評価対象地の評価額を(理論上)算出することはできる(このように実際の土地取引の事例をベースに算出した金額が妥当と認められる場合もある)
その算出した評価額と財産評価基本通達に従って計算した評価額を比較してみる
その差があまりない、ということであれば、鑑定評価をしても変わらない可能性がある(財産評価基本通達に従って計算した評価額が妥当であるということ)
また、実際に不動産鑑定士に鑑定評価を依頼する場合には、その評価の前提条件が、税務署から見ても妥当であると認められるものになっているかどうかを確認する必要がある(不動産鑑定士による鑑定評価だからといって、必ず税務署に認められるワケではない)
不動産鑑定士は専門的な手法により鑑定評価を行うが、難しくてもその評価の過程を理解し、その評価の過程は妥当なモノであり、したがって、算出された評価額も妥当である、だから、その鑑定評価を基に相続税の申告をした、ということを税務署に説明できるようにしておく(さらに、そもそも鑑定評価を行った理由として、財産評価基本通達に従って算出された評価額の妥当性を検証した際、上記の実際の土地取引の事例をベースに算出した金額と比較して、乖離があった旨を説明できるようにもしておく)
地積規模の大きな宅地の評価上の注意点
地積規模の大きな宅地の評価の「規模格差補正率」と「奥行価格補正率」等は重複適用可
倍率地域の土地については、「通常の評価額=固定資産税評価額×倍率(①)」と「地積規模の大きな宅地の評価を適用して計算した評価額(②)」のいずれか低い金額を採用する
「②は①に規模格差補正率を適用して計算するんだから、必ず②の方が低い金額になるのでは?」と思ったら大間違い。
①×規模格差補正率=②ではない
②は、「その宅地が標準的な間口距離および奥行距離を有する宅地であるとした場合の1㎡当たりの価額」をベースに、奥行価格補正率等や規模格差補正率を適用して評価する
「標準的な間口距離および奥行距離を有する宅地」ということは、キレイな形の土地ということ
キレイな形の土地なので、土地の形状等による減価がないため、単価が高くなる
それに対して、①の固定資産税評価額は、土地の状況等を勘案して安く算出されている場合があるため、単価が安くなる
「地積規模の大きな『宅地』の評価」ではあるが、市街地農地・市街地周辺農地・市街地山林・市街地原野等も、適用要件を満たせば、その評価の対象になる
宅地造成費の控除等も可能だが、
- 宅地へ転用するには多額の造成費を要するため、経済合理性の観点から宅地への転用が見込めない場合
- 急傾斜地などのように宅地への造成が物理的に不可能であるため宅地への転用が見込めない場合