相続税専門税理士の富山です。
今回は、役所でスムーズに贈与税の申告に必要な書類を取得できなかったために、申告が期限までにできなかったとしても、期限までに申告できなかったことを役所のせいにはできない、とした事例について、お話します。
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公的な書類を取得したくても役所に交付してもらえなかったら?
次のようなことって、起こり得ると思います。
出典:TAINS(F0-3-573)(一部抜粋加工)
平27-11-20裁決
区役所の窓口で戸籍の附票の写しの交付申請を行ったが、窓口担当者から、意味不明な「税務署への確認」を執拗に求められ、戸籍の附票の写しの交付を受けることができなかった
その結果、次のような事態になりました。
本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が、請求人の母から贈与により取得した現金について、相続税法第2章第3節《相続時精算課税》の各規定(以下「相続時精算課税制度」という。)の適用を受ける旨記載した贈与税の申告書を法定申告期限後に提出したところ、原処分庁が、相続時精算課税制度の適用は法定申告期限内に申告することが要件であるとして更正処分等をしたのに対し、請求人が、申告書の提出が法定申告期限後になったのは、区役所窓口において同制度の適用に必要な戸籍の附票の写しの交付を受けることができなかったためであり、その経緯を考慮すれば、同制度の適用が認められるべきであるとして、その一部の取消しを求めた事案である。
想う相続税理士秘書
どんな理由でも期限内に申告をしなければ相続時精算課税制度は適用不可!
相続時精算課税制度の適用を受けるためには、相続税法第28条第1項に規定する贈与税の申告期間内に同制度の適用を受けようとする旨を記載した相続時精算課税選択届出書を贈与税の申告書に添付して提出することが必要
期間内に相続時精算課税選択届出書を贈与税の申告書に添付して提出できなかった場合におけるゆうじょ規定も設けられていないことからすれば、法定申告期限内に贈与税の申告書を提出できなかった帰責事由の有無や申告遅延日数の多寡等を理由として、同制度の適用は認められるべきであるとする請求人の主張はいずれも採用することができない
「ゆうじょ規定」とは、特例等を適用するための要件を満たすことができなかったとしても、それが一定のやむを得ない事情によるモノである場合には、要件を満たしているモノとして、その特例等の適用を認める税法上の規定です。
要件を満たせなかったとしても、「そういう事情ならしょうがないよね」と許してもらえる場合がある、ということです。
しかし、この相続時精算課税制度の適用には、そのような「ゆうじょ規定」がありません。
相続税法基本通達(一部抜粋加工)
最終改正日:令和05年12月01日
21の9-3 相続時精算課税選択届出書の提出
なお、相続時精算課税選択届出書をその提出期限までに提出しなかった場合には、相続時精算課税の適用を受けることはできないことに留意する。
(注)1 提出期限までに相続時精算課税選択届出書が提出されなかった場合におけるゆうじょ規定は設けられていない。
とにかく早く着手することで想定外の事態に対応できるようにしておく
この事例では、申告期限(平成26年3月17日←15日が土曜日のため)の2日後(平成26年3月19日)に申告書を提出しています。
ということは、4日前の木曜日に窓口に行っていれば、その日に戸籍の附票の写しを交付してもらえなかったとしても、17日には交付してもらえて、期限内申告ができたかもしれません。
もっと前に窓口に行っていれば、余裕で交付してもらえたでしょう。
一度行ってダメでも、次に国税庁HPの必要書類が記載されている部分をプリントアウトして持っていき、説明に使うこともできたでしょうし、他にも策はいろいろ思い浮かびます。
この事例から学ばせていただくとすれば、それは「早目に動く」ということの重要性が挙げられると思います。
相続税でも贈与税でも、申告はパパッと終わりません。
特例等の要件を確認したり、財産評価等を進めていくと、思わぬ検討課題が浮上することもあります。
そこで作業はストップします。
ギリギリにやっていたら大変です。
余裕を持って準備・手続きを進めましょう。
想う相続税理士
申告期限ギリギリだと引き受けてもらえない場合も考えられます。