相続税専門税理士の富山です。
今回は、非上場株式を評価する場合において、死亡退職金を年金方式で支払うときの純資産価額の計算方法について、お話します。
出典:TAINS(評価事例708322)(一部抜粋加工)
東京国税局課税第一部 資産課税課 資産評価官(令和6年7月作成)
「資産税質疑事例集」
もらう側ではなく払う側はどうなる?
相続税申告における年金形式で受け取る死亡退職金の取扱い上記の記事では、相続税申告における、年金形式で受け取った死亡退職金の取扱いについて、お話しました。
亡くなった方が、非上場会社から死亡退職金を受け取り、かつ、その非上場会社の株式を所有している場合には、その非上場会社の株式も相続税の課税対象となる訳ですが、その評価において、純資産価額の計算上、その死亡退職金を負債として計上することができるのでしょうか?
また、計上する場合には、その計上額はどのように計算するのでしょうか?
死亡退職金の支払原資相当額を負債に計上する
評価会社が死亡退職金1,000万円を課税時期後10年間にわたり年金の方法(各年100万円)により支払う場合、
課税時期において、評価会社に留保させるべき支払原資に相当する金額を「取引相場のない株式等の評価明細書」の第5表の「負債の部」の「相続税評価額」欄及び「帳簿価額」欄に記載する。
例えば、課税時期を令和5年1月10日とした場合の当該支払原資に相当する金額は、以下のとおり計算する。
毎年の支払額1,000,000円×(注)9.471=9,471,000円
(注)支払期間(10年)に応じた基準年利率(年1.0%)による複利年金現価率
死亡退職金を年金形式で支払うことになったのであれば、将来の各支払時期に支払う原資に相当する金額を評価会社に留保させるのが相当であり、その支払原資は、単純に各支払額を合計するのではなく、通常の方法で運用するとした場合に、課税時期において必要となる金額、ということになり、上記のような計算方法となります。
みなし相続財産としての死亡退職金の金額とは必ずしも一致しない
被相続人の死亡に伴い支給されることとなった退職手当金等の金額のうち相続税法第3条《相続又は遺贈により取得したものとみなす場合》第1項第2号により相続又は遺贈により取得したものとみなされる金額については、相続税法第24条《定期金に関する権利の評価》の規定により定期金として評価した金額によることから、上記の金額に一致しない場合もあることに留意する。
相続財産としての死亡退職金(みなし相続財産)は、下記の記事にあるとおり、定期金に関する権利として評価するため、非上場株式の純資産価額に負債として計上される死亡退職金の金額は、みなし相続財産として申告する死亡退職金の金額と異なる(払う方ともらう方で金額が一致しない)場合があります。
相続税申告における年金形式で受け取る死亡退職金の取扱い想う相続税理士