相続税専門税理士の富山です。
今回は、下記の資料を基に、相続税の修正申告の要否について、お話します。
出典:TAINS(相続事例707714)
質疑応答事例7714 Ⅴ 相続税の審理上の留意点
東京国税局課税第一部 資産課税課 資産評価官(令和4年8月作成)
「資産税審理研修資料」【情報公開法第9条第1項による開示情報】
相続税の修正申告をしなくてもいい場合がある?
相続税法(一部抜粋加工)
第31条 修正申告の特則
第27条若しくは第29条の規定による申告書又はこれらの申告書に係る期限後申告書を提出した者(相続税について決定を受けた者を含む。)は、次条第1項第1号から第6号までに規定する事由が生じたため既に確定した相続税額に不足を生じた場合には、修正申告書を提出することができる。
修正申告の特則の規定において、相続税の納付不足が生じているのに、修正申告を「することができる」、つまり、修正申告を「するのは任意である(してもしなくてもいい!)」と定めているケースがあります。
そのケースとは、「次条第1項第1号から第6号までに規定する事由が生じた」場合なのですが、ピックアップしてみると(他のパターンもあります)、
相続税法(一部抜粋)
第32条 更正の請求の特則
相続税又は贈与税について申告書を提出した者又は決定を受けた者は、次の各号のいずれかに該当する事由により当該申告又は決定に係る課税価格及び相続税額又は贈与税額が過大となつたときは、当該各号に規定する事由が生じたことを知つた日の翌日から4月以内に限り、納税地の所轄税務署長に対し、その課税価格及び相続税額又は贈与税額につき更正の請求をすることができる。
一 第55条の規定により分割されていない財産について民法(第904条の2(寄与分)を除く。)の規定による相続分又は包括遺贈の割合に従つて課税価格が計算されていた場合において、その後当該財産の分割が行われ、共同相続人又は包括受遺者が当該分割により取得した財産に係る課税価格が当該相続分又は包括遺贈の割合に従つて計算された課税価格と異なることとなつたこと。
三 遺留分侵害額の請求に基づき支払うべき金銭の額が確定したこと。
とあり、更正の請求の特則に関する条文となっています。
一は「遺産分けが決まっていなかったけど決まった」、三は「遺留分侵害額の請求に基づき金銭の支払いが確定した」、というパターンです。
相続人が長男・二男の2人だとします。
遺産分けが決まらなかったので、それぞれが法定相続分(1/2)で財産を取得したものとして相続税の申告をしたが、二男が全部財産を相続する、ということで遺産分割協議が成立した、という場合、二男は修正申告をしなくてもいい、ということです。
長男Aが全財産を相続する、という遺言があり、それに基づき長男が相続税の申告をしたのですが、二男が遺留分侵害額の請求をして、それに基づき長男は二男に2,500万円を支払うことになった、という場合、二男は修正申告をしなくてもいい、ということです。
これは、実務的には長男が更正の請求をしないことを前提としていて、もし長男が更正の請求をすれば、税務署は二男に対して修正申告の慫慂(しょうよう:勧めてくること)をしてくるものと思われます(長男に相続税を還付して、二男が追加の相続税を納めなければ、一の場合、相続税を半分しか負担しないで相続できることになってしまいますから)。
相続税の修正申告を必ずしなければならない場合がある
上記と似たパターンでも、必ず修正申告をしなければならない場合があります。
相続税法(一部抜粋加工)
第31条 修正申告の特則
2 前項に規定する者は、第4条第1項又は第2項に規定する事由が生じたため既に確定した相続税額に不足を生じた場合には、当該事由が生じたことを知つた日の翌日から10月以内に修正申告書を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。
同じ修正申告の特則の規定でも、「修正申告書を」「提出しなければならない」としています。
この「第4条」「第2項」は下記のとおりです。
相続税法(一部抜粋)
第4条 遺贈により取得したものとみなす場合
2 特別寄与者が支払を受けるべき特別寄与料の額が確定した場合においては、当該特別寄与者が、当該特別寄与料の額に相当する金額を当該特別寄与者による特別の寄与を受けた被相続人から遺贈により取得したものとみなす。
修正申告書を提出しなければならないのは、「特別寄与料を取得した場合」です。
例えば、遺言で財産を取得した長男のお嫁さんに対して特別寄与料の支払いがあった場合、相続人の方が更正の請求をしなければ、長男のお嫁さんは修正申告をしなくてもいいか、というと、そんなことはない(修正申告をしなければならない)ということです。
想う相続税理士
相続税法(一部抜粋)
第50条 修正申告等に対する国税通則法の適用に関する特則
2 第31条第2項の規定による修正申告書及び第35条第1項の更正に対する国税通則法の規定の適用については、次に定めるところによる。
一 当該修正申告書で第31条第2項に規定する提出期限内に提出されたものについては、国税通則法第20条(修正申告の効力)の規定を適用する場合を除き、これを同法第17条第2項(期限内申告)に規定する期限内申告書とみなす。