相続税専門税理士の富山です。
今回は、共有の相続財産の注意点について、お話します。
相続があったら相続財産は誰のモノ?
相続があった場合、遺言があれば、原則として、その遺言の内容に従って、財産の名義を変えます。
遺言がなければ、相続人間における遺産分割協議によって、各財産の取得者を決めて、それに基づいて財産の名義を変えます。
では、遺言がなく、話し合いがモメてしまって、この遺産分割協議がまとまらなかった場合、その財産はどうなるかというと、相続人全員の「共有状態」にあることになります。
共有の相続登記には種類がある
上記で「相続人全員の『共有状態』にある」とお話しましたが、例えば、相続財産の中にA土地がある場合、A土地は法務局で登記事項証明書を取得すると、亡くなった方の名義のままになっています。
そこで、そのA土地が遺産分割協議成立前の「共有状態」であることを登記する場合があります。
共有財産の保存登記としての法定相続による共同相続登記です。
財産が未分割であり、各相続人の法定相続分に応じて共有状態になっている、ということを登記する、ということです。
想う相続税理士秘書
このような場合とは違い、誰が取得するか決まらない(例えば、A土地は誰も欲しがらない)から、「もうしょうがないから、相続人全員で共有することにしよう!」ということで、遺産分割協議書を作成して、文句が出ないように平等に、法定相続分で共有で登記する場合もあります。
旦那様がお亡くなりになり、相続人が奥様・長男・長女の3人だとしたら、奥様1/2・長男1/4・長女1/4の持分で登記する、ということになります。
遺産分割協議がまとまったら?
その後、遺産分割協議がまとまり、A土地を長男が相続することになったとします。
この場合、前者の共同相続登記がされている場合には、A土地はあくまでも未分割ですから、正式にA土地を長男が相続することに決まった、ということで、長男がA土地に対応する相続税を納めることになります。
もし、A土地の相続登記が、後者の遺産分割協議による共有登記だったらどうなるでしょうか?
こちらも、奥様・長男・長女が法定相続分で取得しているため、何となくA土地が誰のモノか宙ぶらりんになっている感じがするかもしれませんが、A土地は奥様1/2・長男1/4・長女1/4の持分で各相続人に帰属しています。
ですから、A土地を長男のモノにするということは、A土地の持分のうち、奥様1/2・長女1/4のモノが長男にタダで移転することになりますので、その移転は贈与となり、贈与税の課税対象となります。
相続税法基本通達
19の2-8 分割の意義
法第19条の2第2項に規定する「分割」とは、相続開始後において相続又は包括遺贈により取得した財産を現実に共同相続人又は包括受遺者に分属させることをいい、その分割の方法が現物分割、代償分割若しくは換価分割であるか、またその分割の手続が協議、調停若しくは審判による分割であるかを問わないのであるから留意する。
ただし、当初の分割により共同相続人又は包括受遺者に分属した財産を分割のやり直しとして再配分した場合には、その再配分により取得した財産は、同項に規定する分割により取得したものとはならないのであるから留意する。
想う相続税理士