【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

生前贈与加算(相続税申告)と特別受益の持ち戻し(民法)の相違点

相続税専門税理士の富山です。

今回は、相続税の申告における生前贈与加算と、民法の規定における特別受益の持ち戻しについて、お話しします。


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生前贈与財産にも相続税が課税される場合がある

相続で財産を取得した方が、亡くなった方から生前に贈与により取得した財産がある場合には、令和8年12月31日までに発生した相続については、相続開始前3年以内(死亡の日からさかのぼって3年前の日から死亡の日までの間)の贈与財産が、相続税の課税対象となります(これを「生前贈与加算」と言います)。

逆に言うと、相続で財産を取得していない相続人の方は、相続開始前3年以内に亡くなった方から贈与により取得した財産があっても、その贈与財産には相続税が課税されません(贈与税は課税されます)。

また、すべての贈与財産が生前贈与加算の対象になるのではなく、贈与税の配偶者控除、住宅取得等資金の非課税贈与、教育資金の非課税贈与、結婚・子育て資金の非課税贈与などの、贈与税の非課税の適用を受けた贈与については、加算の対象から除外されます(これらに該当する場合でも、一定の場合には加算の対象になる場合があります)。

生前贈与財産も遺産分けの対象(持戻しの対象)になる場合がある

民法(一部抜粋加工)
(特別受益者の相続分)
第九百三条 共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。

贈与が相続開始前3年以内に該当しなければ、別の言い方をすると、贈与から3年を超えれば、相続が発生しても相続税が課税されないから、無税で自分のモノになる、と思われるかもしれませんが、そんなことはありません。

その贈与が、上記の「婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた」モノ(「特別受益」)に該当すると、その贈与財産は遺産分けの対象(持戻しの対象)となり得ます。

遺留分算定基礎財産に含まれるかどうかの判断の場合には、1年以内・10年以内の話が出てきますが、特別受益の持ち戻しの場合には、その話が出てきませんので、大昔の贈与であっても、持ち戻しの対象となり得ます。

相続人が長女・二女の2人で、長女が生前に5,000万円の生前贈与(「特別受益」)を受け、相続開始時の相続財産の金額が6,000万円だったとします。

6,000万円の相続財産について、法定相続分で(1/2ずつ平等に)遺産分けをする場合、6,000万円を1/2ずつするのではなく、

長女:(6,000万円+5,000万円)×1/2△5,000万円=500万円
二女:(6,000万円+5,000万円)×1/2=5,500万円
と計算する(5,000万円を持ち戻して計算する)ことになる場合がある、ということです。

特別受益の5,000万円を加味すると、それぞれ5,500万円ずつの財産を(平等に)取得した、ということになります。

想う相続税理士秘書

非課税贈与財産も遺産分けの対象になる場合がある

上記でお話したように、住宅取得等資金の非課税贈与、教育資金の非課税贈与、結婚・子育て資金の非課税贈与などの、贈与税の非課税の適用を受けた贈与については、相続税の申告において、加算の対象から除外される(これらに該当する場合でも、一定の場合には加算の対象になる場合があります)のですが、特別受益に該当すれば、贈与税が非課税かどうかは関係なく、遺産分けの対象になり得ます。

ただし、贈与税の配偶者控除の適用を受けた財産については、持ち戻しの対象になる場合と、ならない場合があります。

4 婚姻期間が二十年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたときは、当該被相続人は、その遺贈又は贈与について第一項の規定を適用しない旨の意思を表示したものと推定する。

贈与財産が「居住用不動産」であれば、上記の取扱いにより、持ち戻しの対象にはなりません。

ただし、非課税の適用を受けたのが、「居住用不動産を取得するための金銭の贈与」だった場合には、上記の取扱いが適用されないため、持ち戻しの対象となり得ます。

生前贈与加算される金額と持ち戻しされる金額の違いにも注意

相続税の申告における生前贈与加算は、贈与時の評価額であるのに対し、特別受益の持ち戻しは、相続時の価額です。

想う相続税理士

評価額が低い時に贈与をしても安心できない場合がありますので、ご注意を。