相続税専門税理士の富山です。
今回は、相続の時に代償分割金を支払っている方が、相続財産を譲渡する際、相続税の取得費加算の特例の適用を受ける場合の計算方法について、お話します。
土地等を売った儲けは所得税の課税対象
土地や建物、株式等を譲渡した場合、儲けが出れば、原則として、所得税の確定申告をする必要があります。
その儲け(譲渡所得金額)は、次のように計算します。
相続財産である土地等を売った場合の必要経費の特例
相続財産である土地や建物、株式等を一定期間内に譲渡した場合、納付した相続税のうちの一部を、上記の「取得費」に加算することができます。
これを、「相続税の取得費加算の特例(相続財産を譲渡した場合の取得費の特例)」といいます。
収入金額から差し引く取得費の金額が増えれば、その分、譲渡所得金額が減ります。
つまり、相続税が安くなるのです。
その取得費に加算する相続税は、次のように計算します。
①:その者の相続税額
②:その者の相続税の課税価格の計算の基礎とされたその譲渡した財産の相続税評価額
③:その者の取得財産の価額
④:その者の相続時精算課税適用財産の価額
⑤:その者の純資産価額に加算される暦年課税贈与分の贈与財産価額
特例適用者が遺産分割の際に代償分割金を支払っている場合
相続税の取得費加算の特例の適用を受ける方が、その相続(遺産分割)の際に、他の相続人の方等に代償分割金を支払っている場合には、上記②の金額が下記(A)のようになります。
想う相続税理士
上記の「取得費に加算する相続税額」の算式の①の相続税額は、債務控除を適用した分だけ安くなった相続税の金額です。
ところが、上記の「取得費に加算する相続税額」の算式の後半(「③+④+⑤」)をご覧いただくとお分かりのとおり、この計算では、債務控除の金額(債務や葬式費用の負担)が考慮されていません。
つまり、債務や葬式費用を負担しないで相続税を高くしておいた方が、取得費に加算する相続税額が増えることになりますので、誰が債務や葬式費用を負担するかを考える場合には、この特例の適用予定の有無も考慮に入れましょう。