相続税専門税理士の富山です。
今回は、非上場株式を評価するにあたり、評価会社が相続開始前3年以内に取得した土地建物等について、圧縮記帳の適用を受けていた場合の取扱いに関する裁決事例について、お話します。
出典:TAINS(J71-4-25)(一部抜粋加工)
平18-04-11裁決
会社が3年以内に取得した土地建物等は時価評価する
財産評価基本通達(一部抜粋加工)
185 純資産価額
179《取引相場のない株式の評価の原則》の「1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)」は、課税時期における各資産をこの通達に定めるところにより評価した価額(この場合、評価会社が課税時期前3年以内に取得又は新築した土地及び土地の上に存する権利(以下「土地等」という。)並びに家屋及びその附属設備又は構築物(以下「家屋等」という。)の価額は、課税時期における通常の取引価額に相当する金額によって評価するものとし、当該土地等又は当該家屋等に係る帳簿価額が課税時期における通常の取引価額に相当すると認められる場合には、当該帳簿価額に相当する金額によって評価することができるものとする。以下同じ。)の合計額から課税時期における各負債の金額の合計額及び186-2《評価差額に対する法人税額等に相当する金額》により計算した評価差額に対する法人税額等に相当する金額を控除した金額を課税時期における発行済株式数で除して計算した金額とする。
亡くなった方が非上場会社の株式(非上場株式)を所有していた場合、その非上場株式も相続税の課税対象になります。
その非上場株式を評価する場合、「純資産価額」の計算においては、その会社が所有する土地や建物については、亡くなった方が所有していた土地や建物の評価と同様に、路線価方式や倍率方式等、財産評価基本通達に従って評価します。
ただし、評価会社が相続開始前3年以内に取得した土地建物等については、「通常の取引価額」で評価する必要があります。
圧縮記帳適用後の金額は「通常の取引価額」ではない
租税特別措置法第64条の2の規定からすれば圧縮記帳後の価額は法人税法に関する法令の規定を適用する場合のものであることが認められ、これらのことからすれば、請求人らが主張する本件各代替資産の圧縮記帳後の価額をもって、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額である客観的な交換価額を示すものであると認めることはできない
会社の決算書に載っている土地建物等の金額(計上額)は、原則として、「買った時の金額」です。
そして、減価償却資産については、その後の時の経過に応じた減価償却費相当額分だけ金額が減少しています(ちゃんと減価償却していれば)。
「買った時の金額」というのは、購入時の取引価額(時価)です。
ですから、買った時の金額ベースで計上されている決算書上の計上額は、課税上弊害がなければ、通常の取引価額として認められるものと思われます。
しかし、その土地建物等が圧縮記帳の適用を受けている場合には、決算書上の計上額だとは言っても、その適用後の金額は通常の取引価額とは言えない、とされました。
土地の交換があった場合にも注意
相続開始前3年以内に「土地の交換(交換特例)」があったような場合にも注意が必要です(これも圧縮記帳の特例です)。
所有していたA土地と交換相手のB土地を交換した場合、決算書に計上されているB土地は(交換特例の適用により)従前のA土地とほぼ同額かもしれませんが、非上場株式の評価上は、交換時の時価(通常の取引価額)で計上する必要があります。
想う相続税理士