相続税専門税理士の富山です。
今回は、相続の発生に伴い亡くなった方の口座からお金が引き出せなくなることへの対応策及びその注意点(応用編)について、お話します。
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口座凍結を免れて油断すると失敗する
相続の発生に伴う口座凍結に対する対応策の注意点(基本編)上記の「(基本編)」の記事でお話したとおり、口座凍結を免れるために、亡くなる前にお金を引き出す場合があります。
それは、葬式費用等の支払いに充てる目的で行われることがほとんどなのですが、「お金を引き出す」という目的が達成できると、油断して失敗する場合があります。
引き出したお金はあなたのモノではない
うまくお金が引き出せると、「これは自分のモノにしていいのでは?」と思ってしまうことがあるかもしれません。
もし自分のモノになるとしたら、それは、亡くなった方から贈与により取得する、ということになります。
しかし、通常は「相続が発生しそうだ、亡くなった後の葬式費用等がいくらかかるか分からない、とりあえずおろしておこう」という感じで、勝手にお金を引き出しているハズです。
これは、贈与者(亡くなった方)の贈与の意思表示がないため、「贈与」にはなりません。
想う相続税理士
下記の記事をご覧ください。
想う相続税理士秘書
税務署はお金を引き出したことを簡単に把握する
その引き出せたお金が自分のモノだと勘違いしてしまうと、当然、相続税の申告の際には、そのお金を財産として計上しないことになるでしょう。
ところが、税務署は亡くなった方の預貯金口座の過去の取引履歴を簡単に入手することができます。
その引き出したお金が申告されていなければ、相続財産の計上もれを指摘されるリスクが高くなります。
親族からの信用・信頼を失うリスクもある
問題になるのは、「対税務署」の「税金(相続税)」の話だけではありません。
「対相続人(他の親族)」の「遺産分け」の話も出てきます。
遺産分けをする場合、どんな財産があるのか、全部でいくらあるのか、をきちんと明らかにする必要があります。
それをした上で、「じゃあ半分ずつでどうだろうか?」とか、「それだけあるなら私は○○円欲しい(だけでいいからもらいたい)」というような話し合いになるワケです。
生前に引き出したお金は、上記でお話したとおり、贈与が成立していないため、亡くなった方のモノ(相続財産)です。
つまり、遺産分けの対象です。
生前にお金を引き出したことを内緒にしていて、それがバレると、他の相続人等の親族からの信用・信頼を一気に失うことになります(関係性が悪化します)。
親族もお金を引き出したことを簡単に把握できる
「税務署じゃないんだからバレないんじゃない?」と思うかもしれませんが、下記の記事にあるように、他の相続人が単独で金融機関に過去の取引履歴(口座の動き)の開示を請求することができます。
亡くなった方の口座から過去にお金を引き出していたのはバレる?想う相続税理士