相続税専門税理士の富山です。
今回は、遺贈の放棄があった場合の財産の行方について、お話します。
なぜ遺言を作成するのか?
遺言を作成する場合、「この財産を誰々に渡したい」「誰々には財産を渡したくない」等の何か意図・目的があるハズです。
遺言があれば、必ずその意図どおりになるかというと、ならない場合があります。
遺言を作成しても、相続人には最低限の財産の取り分である「遺留分」があるため、遺言により財産があまりもらえない相続人は、「遺留分侵害額の請求」をすることにより、財産を多く取得した方に、財産をもらえなかった分のお金を請求することができます。
請求された方は、お金を渡さなければならないワケですから、その分、相続財産(または自分の財産)が減少します。
トータル的には、渡したい分だけ渡せない場合がある、ということです。
しかし、遺言がないと、相続人間の遺産分割協議による遺産分けとなります。
この場合には、相続人以外の方には財産が渡りません。
また、話し合いさえまとまれば、どのように分けることもできるのですが(1人が全部の財産を取得するのでもOK)、話し合いがまとまらなければ、原則として法定相続分での分割となるため、財産を渡したくない人にも平等に財産が渡ります。
遺留分がない場合もある
上記で、遺言を作成しても「遺留分」がある、とお話しましたが、兄弟姉妹には遺留分が認められていません。
ですから、亡くなった方の子や孫、父母や祖父母がいらっしゃらないために、亡くなった方の兄弟姉妹が相続人になる場合には、遺言を作成すれば、その方に財産を丸々渡すことができます(兄弟姉妹は遺留分を請求できません)。
遺贈の放棄があったらどうなる?
遺言により財産を引き継がせることを「遺贈」というのですが、例えば、遺言により財産Aの受取人に指定されているBさんが、「私は財産Aはいりません」と「遺贈の放棄」をした場合、その財産Aはどうなるのでしょうか?
民法
(遺贈の無効又は失効の場合の財産の帰属)
第九百九十五条 遺贈が、その効力を生じないとき、又は放棄によってその効力を失ったときは、受遺者が受けるべきであったものは、相続人に帰属する。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
遺贈の放棄があると、その財産は相続人のモノになります。
遺言により、兄弟姉妹が全く財産を受け取れない状態で、受取人に指定されて全財産を取得することになった方が、「自分が財産をもらうなんて申し訳ない」と思ったり、「兄弟姉妹に悪く思われるのが嫌だ」と考えてしまうと、遺贈の放棄をする可能性があります。
しかし、遺言を書いた方(遺言者)は、兄弟姉妹に財産を渡したくないために遺言を書いたのかもしれません。
でも、遺贈の放棄をしてしまうと、せっかく遺言を書いたのに、その目的が達成されなくなってしまうのです。
ですから、このような場合には、「遺贈の放棄があった場合には、財産AをCさんに遺贈する」といった内容の「補充遺贈」をしておきましょう。
想う相続税理士