【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

あなたに落ちてほしくない相続税申告とその手前に潜む4つの落とし穴


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遺言確認・遺言執行者・公正証書遺言・自筆証書遺言

相続税
申告の
スタートは
遺言探し!

相続税の申告に着手する際、まず初めにすることは、遺言の有無の確認です。

遺言があるかどうか、遺言があるとしても、それが有効なものかどうかを確認する必要があります。

遺言がなければ、相続人間で遺産分割協議(遺産分けの話し合い)をしなければなりません。

遺言が
あったら
次は
遺言執行者
に連絡!

遺言執行者とは、遺言手続に関する一切の権限を有する者です。

この遺言執行者が、相続財産の名義書きえや、預貯金の解約等の手続きを行うことになります。

遺言執行者は、遺言で指定されます。

その指定がなかったら、遺言執行者はいないということになります。

この場合には、相続人が名義書換えなどを行うことになります。

遺言執行者には、相続人がなることもできますし、外部の人を指定することもできます。

この遺言執行者の承認を受けずに、遺言の内容と違う遺産分割を行っても、その遺産分割は無効です。

遺言が見つかった場合には、遺言執行者を確認し、そして、その遺言執行者にすぐに連絡を取りましょう。

また、遺言執行者に対しては報酬が発生する場合があります。

遺言の中にその報酬を決めておくことができます。

その決まりがない場合には、家庭裁判所がその報酬を決定することになっています。

無報酬の場合もありますが。

公正証書
遺言は
ラク!

遺言には、いろいろな種類があるのですが、それが「公正証書遺言」なら、死亡と同時に効力が生じるため、特に心配はありません。

公正証書遺言なら、通常は、その遺言の内容の通りに遺産分けをすることができるので、土地等の名義書換えや、預貯金等の解約に使用することができます。

「『通常は』と言う事は、遺言の通りに遺産分けをすることができない場合もあるの?」ですって?

そうなんです。

遺言があっても、その遺言の記載内容の通りに遺産分けできない場合もあるんです。

相続人には、この割合だけは相続財産をもらう権利があるという「遺留分」が認められているので、相続人が、自分がもらえる財産が少ないということで、家庭裁判所に対し、遺留分の減殺請求を行った場合には、その遺留分に応じた財産をその相続人に渡す必要が出てきます。

結果的に、遺言の通りに財産を分けられない場合もあるということなんです(これは公正証書遺言以外の遺言も同じです)。

公正証書遺言は、公証役場で原本が管理され、なんと150年間保管してくれます!

遺言書が破棄されたり隠された場合でも、公証役場でその謄本(コピー)を入手することができます

また、公正証書遺言は全国で一元管理されているため、どの公証役場でも、その有無を確認することが可能です。

ただし、その確認をすることができるのは、死亡後のみです。

つまり生きている間は、あるかどうかも内緒にできるということです。

自筆証書
遺言の
場合の
たくさん
ある注意点

その遺言が、自筆証書遺言である場合には、取扱いや手続きに注意を要します

遺言書を保管していた方、又はその遺言を発見した方は、その遺言を書いた方の住所地を管轄する家庭裁判所に、遺言書検認申立書を提出する必要があります。

また、自筆証書遺言については、通常、遺言の内容が分からないように封印をするのですが、その開封は、相続人やその代理人が立ち会いをして家庭裁判所で行わなければなりません

また、封印されているかいないかにかかわらず、自筆証書遺言については、家庭裁判所で「検認」の手続きをする必要があります

封印のある自筆証書遺言を家庭裁判所以外の場所で開封したり、検認をしなかった場合には、50,000円以下の罰金(科料)がかかりますのでご注意を。

名義預金・申告要件・名義書換期限

相続税の
申告は
まずは
名義預金の
把握から!

一般の方は、亡くなった方の名義になっている財産だけが相続税の課税の対象になると考えていることが多いです(違いますよ)。

そのため、名義預金(実態は亡くなった方のお金なのに、相続人の方などの名義になっている預金。相続人の方のものであるというのであれば、その名義預金ができた時に贈与税の申告及び納税をする必要があるが、それをしていない、さらに、相続人がその名義預金の存在を知らない場合もある)の存在について相続人が税理士に伝えず、その後、税務調査があったときに、財産計上もれ+修正申告という結果になってしまうことがあります。

これを避けるためには、税理士が「名義預金」についてきちんと説明すること、相続人は「名義預金」についてきちんと理解することが必要です。

相続税が
かからなく
ても
相続税の
申告が
必要な
場合が
あります!

相続税の申告をする上で相続税が安くなる特例を受けるためには、亡くなってから10ヶ月以内に遺産分割協議を確定させ、その後確定した遺産分けに基づいた相続税の申告書を提出する必要があります。

この場合、特例を受けることにより、結果的に相続税が発生しなかったとしても、相続税の申告書を提出する必要があります特例の適用を受けるための要件に「期限内に申告すること」という項目があるのです)。

相続税の
申告と
相続財産の
名義の
書換えは
別!
でも
申告前に
名義の
書換えを
する必要が
ある場合も
あります!

一般的な相続税の申告では、10ヶ月以内に遺産分割協議が確定していさえすればいいので、実際の土地建物の名義の書換えや預貯金などの解約は10ヶ月経過後でも良く、通常は慌てる必要はありません。

ただし、納税資金が不足している場合には、その預貯金などを解約したり、財産を換金して、納税に充てる必要があるため、解約などを10ヶ月以内に完了させておかないと納税に間に合わなくなるのでご注意を。

また、相続税を現金で納付することが難しい場合に、「物納」といって、お金の代わりに相続した財産を国に持っていってもらい、相続税を納めるという方法を選択することもできるのですが、この場合、土地建物などをまずは相続人の名義に変える必要があるため(それに加えて、物納を申請するためには、いろいろな手続きが必要となり、それに時間がかかります)、さらに早期の対応が必要です。

債権放棄をすると他の株主がトバッチリを食う


想う相続税理士

「債権放棄」についてのお話です。

役員はいざとなったら会社にお金を入れる

想う相続税理士

会社の資金繰りが悪い場合、社長が会社にお金を入れる場合があります。

「会社」「社長」は法律上は「別物」です。

「お金を入れる」ということは、「会社にお金を貸す」ということになります。

もし、「あげる」ということになると、会社はそれを所得(儲け)として申告しなければなりません。

お金がないのに、さらに税金なんて払いたくないですから、「あげる」のではなく、「貸す」ことにするのです。

中小企業では、よくある話です。

返済の見込みがない会社に対する貸付金も立派な相続財産

「お金を貸す」ということは、その社長は、「貸付金」を有している、ということになります。

「貸付金」は、返ってくるものです。

あげた訳ではないのですから。

会社の業績が回復せず、「返ってこないだろうけどしょうがない」と思いながら、どんどんお金を入れることもあるでしょう。

その、返ってこない(かもしれない)お金も、立派な「貸付金」「金銭債権」です。

これは、その社長がお亡くなりになった場合、社長の相続財産になります

返ってこないかもしれないのに。

想う相続税理士

「返さなくていいよ」と言えば相続財産ではなくなる

想う相続税理士

この場合、「債権放棄」をすると、相続財産ではなくなります。

「返さなくていいよ」と、後から「あげたことにする」んです。

先ほど、「あげる」ことにすると、それが会社の儲けになってしまう、と言いました。

しかし、会社の儲けにならない場合があります。

それは、その会社が赤字の時や、過去の赤字がある場合です。

法人税の計算上、過去に発生した赤字でも、当期の黒字と相殺できる場合があります。

「あげる」ことで、黒字になっても、それ以上の赤字があれば、法人税が発生しないのです。

過去の赤字も、黒字と相殺できるタイムリミットがあるので、「その期限が到来する前に使いたい」って話もあるんですよね。

債権放棄をすると会社の株式の価値が上がる

今までお話したシナリオだと、何の問題もないように思えるかもしれませんが、実は、これしか考えないと、落とし穴にハマります

社長の貸付金は、借りている会社から見れば、「借入金」です。

債権放棄により「借入金」がなくなった会社って、貸借対照表をイメージすると分かりやすいと思うんですが、資産がそのままで、負債がドーンと減るんですよね。

つまり、「いい会社」になっちゃうんです。

ということは、その会社の価値を表す「株価」も値上がりします。

「他の株主たちの株価が、社長の債権放棄というアクションにより、値上がりした」ということは、「社長が他の株主に利益を与えた」と言うことになります。

これが「課税の対象」になってしまうんです。

想う相続税理士

債権放棄による他の株主への課税は2パターン

想う相続税理士

この場合、株主に対する課税は、次のようになります。

株主が同族関係者

贈与税課税

株主が同族関係者以外

一時所得として所得税課税

債権放棄する場合には、ご注意を。

想う相続税理士

場合によっては事業廃止も視野に

想う相続税理士

財産評価基本通達に、次のように書かれています。

(貸付金債権等の元本価額の範囲)
205 前項の定めにより貸付金債権等の評価を行う場合において、その債権金額の全部又は一部が、課税時期において次に掲げる金額に該当するときその他その回収が不可能又は著しく困難であると見込まれるときにおいては、それらの金額は元本の価額に算入しない。(平12課評2-4外・平28課評2-10外改正)
(1) 債務者について次に掲げる事実が発生している場合におけるその債務者に対して有する貸付金債権等の金額(その金額のうち、質権及び抵当権によって担保されている部分の金額を除く。)
ヘ 業況不振のため又はその営む事業について重大な損失を受けたため、その事業を廃止し又は6か月以上休業しているとき

この「ヘ」に該当すれば、相続財産として計上しなくてよいことになりますので、あまりに多額の貸付金がある場合には、会社の状況や事業承継の状況にもよりますが、事業廃止も視野に入れることをオススメします。

想う相続税理士

代償分割金を1億円払っても相続財産が1億円減らない話


想う相続税理士

「代償分割金」についてのお話です。

遺産分けをする時にスゴく便利な代償分割金

想う相続税理士

「代償分割金」という言葉を聞いたことがありますか?

「この財産は誰が相続、その財産は誰が相続」と、相続財産を相続人間で個別に分けっこできる場合はいいんですが、例えば相続財産が自宅しかなく、相続人が2人(AさんとBさん)いる、というような場合、そのような分けっこができないですよね。

この場合、その自宅をAさんとBさんの1/2ずつの共有で相続すれば、平等になりますよね。

でも、一緒に住むなら話は別ですが、共有で所有してもしょうがないですよね。

その後にすぐに売却してしまうなら、売却代金を山分けすればいいのでいいと思いますが。

次に考えられる方法としては、財産が自宅1つしかないのだから、AさんかBさんのどちらかがその自宅を取得し、もう片方は財産を取得するのを諦める、というものです。

このやり方も、2人が納得すれば、問題ありませんが、納得できないかもしれませんよね。

これらとは全く別の遺産分けの方法があります。

その自宅をAさんが取得し、AさんからBさんにお金を払って決着するのです。

このお金を、「代償分割金」と言います。

これも、2人が納得する金額であり、その代償分割金を支払えるのであれば、問題ありません。

この場合、AさんBさん2人の相続財産は、次のように計算されます。

Aさん

自宅△代償分割金

自宅の相続税評価額から、Bさんに支払わなければならない代償分割金(代償債務)を控除した金額が、Aさんの相続財産となります。

Bさん

代償分割金

Aさんからもらう代償分割金の金額が、Bさんの相続財産となります。

このように、Aさんが財産を多く相続した、その代償(かわり・つぐない)としてお金を渡す場合、それは贈与ではなく、相続の中の話にできるのです。

想う相続税理士

原則は代償分割金の按分計算が必要

想う相続税理士

ところが、このような単純な算式で計算できない場合があります。

まずは、通達をご覧ください。

相続税法基本通達
(代償財産の価額)
11の2-10 11の2-9の(1)及び(2)の代償財産の価額は、代償分割の対象となった財産を現物で取得した者が他の共同相続人又は包括受遺者に対して負担した債務(以下「代償債務」という。)の額の相続開始の時における金額によるものとする。
ただし、次に掲げる場合に該当するときは、当該代償財産の価額はそれぞれ次に掲げるところによるものとする。(平4課資2-231追加、平8課資2-116、平19課資2-5、課審6-3改正)

「(1) 共同相続人及び包括受遺者の全員の協議に基づいて代償財産の額を次の(2)に掲げる算式に準じて又は合理的と認められる方法によって計算して申告があった場合」 当該申告があった金額
「(2) (1)以外の場合で、代償債務の額が、代償分割の対象となった財産が特定され、かつ、当該財産の代償分割の時における通常の取引価額を基として決定されているとき」 次の算式により計算した金額
A×(C÷B)
(注) 算式中の符号は、次のとおりである。

Aは、代償債務の額
Bは、代償債務の額の決定の基となった代償分割の対象となった財産の代償分割の時における価額
Cは、代償分割の対象となった財産の相続開始の時における価額(評価基本通達の定めにより評価した価額をいう。)

先ほどの計算の方法は、この(1)に該当します。

税務署も、基本的なスタンスとしては、代償分割金の金額なんてどうでもいいのです。

トータルのAさんとBさんの財産の金額は変わらないからです。

相続税は、まず全財産を合計して、そこから相続税を計算するので、全財産の金額が変わらなければ、相続税も変わらないのです。

ところが、この代償分割金によって、相続税が大きく変わる場合があるのです。

そうなると、税務署は黙っていません。

(1)をご覧ください。

「次の(2)に掲げる算式に準じて又は合理的と認められる方法によって計算して」とあります。

実は、どんな決め方でもいいのではなく、本来は、「(2)に準じて」、または、「合理的」に決める必要があるのです。

実は、(2)が原則的な計算方法なのです。

では、税務署が黙っていない場合とは、どんな場合でしょうか?

例えば、相続人が妻Cさんと長男Dさんの2人で、長男Dさんが相続税評価額1億円、時価2億円の土地を相続したとします。

この土地が長男Dさんに必要な土地だからです。

財産はこれだけです。

そして、長男Dさんが、妻Cさんに1億円の代償分割金を支払ったとします。

この場合、(1)の方法で計算をすると、

想う相続税理士

妻Cさん(1)

代償分割金1億円→1億6,000万円以下なので配偶者の税額軽減で相続税0

長男Dさん(1)

土地相続税評価額1億円△代償分割金1億円=0円→相続税0

想う相続税理士

となります。

しかし、これは、配偶者の税額軽減を不当に利用して、課税価格を0にしている、とみなされる危険性があります

この場合に(1)の方法で計算して申告すると、(2)の計算で修正申告をするハメになる可能性があるということです。

すなわち、

妻Cさん(2)

代償分割金1億円×土地相続税評価額1億円/土地時価2億円=5,000万円→1億6,000万円以下なので配偶者の税額軽減で相続税0

長男Dさん(2)

土地相続税評価額1億円△代償分割金1億円×土地相続税評価額1億円/土地時価2億円=5,000万円→相続税が発生

という結末になる可能性がある、ということです。

税務署は、「時価2億円の土地を半分こしたんでしょ、だから、半額の1億円を払ったんでしょ、だったら、相続税評価額も半分こ(5,000万円ずつでしょ)」と言っているのです。

代償分割金を支払う場合には、ご注意を。

想う相続税理士