コンテンツ
- 配偶者が財産を取得しても配偶者の税額軽減を使わないで節税できる「場合」がある
- 配偶者の 税額軽減は 相続税を 安くする 王道
- 特例で 相続税が 0でも 申告は 必要
- 配偶者は 一緒に 財産を 形成した 一番の 貢献者
- 配偶者の 税額軽減を 使う場合は 二次相続に 注意
- 二次相続 まで含めた 試算を する
- 相続人の数 の減少と 配偶者が 元々 持っている 財産が 相続税増大 の要因
- 配偶者が 払った 相続税は 二次相続で 控除できる 場合がある
- 配偶者が 相続税を 払えば その分 配偶者の 財産が減り 二次相続の 節税に つながる
- 配偶者が 払った 相続税は 二次相続の 相続人の 相続税から 控除できる
- 合わせ技で 節税効果が 高くなる という ところが ミソ
- ただし 相次相続 控除は 一次相続と 二次相続の 間が空くと 使えなく なるので 注意
- ただし 相次相続 控除は 引ききれ なくても 還付して もらえない ので注意
- やっぱり 相続税は 試算が 大事
- 亡くなった後でもできる相続税対策をご存知ですか?〔PART 1〕
- 亡くなった後でもできる相続税対策をご存知ですか?〔PART 2〕
- 亡くなった後でもできる相続税対策をご存知ですか?〔PART 3〕
配偶者が財産を取得しても配偶者の税額軽減を使わないで節税できる「場合」がある
想う相続税理士
配偶者の
税額軽減は
相続税を
安くする
王道
相続税には、いくつもの特例があり、それらを適用することによって、相続税を安くすることができます。
代表的なものとして
②小規模宅地等の特例
があります。
これらを適用することによって、相続税が0になることもよくあります。
結構、破壊力がある特例なんですよ!
特例で
相続税が
0でも
申告は
必要
ただし、この2つの特例は、相続税の申告をすることが要件です。
計算したら税金が0だから申告しなくていい、という訳にはいきませんから注意してくださいね。
配偶者は
一緒に
財産を
形成した
一番の
貢献者
今回は、配偶者の税額軽減に絞ってお話したいと思います。
配偶者の税額軽減とはどんな特例制度かというと、配偶者が取得した財産のうち、
②配偶者の法定相続分相当額
のいずれか多い金額については、相続税を課税しない、というものです。
「多い金額」ですから、「法定相続分」なんて難しそうなモノが分からなくても、1億6千万円は相続税がかからないのです。
言い換えれば、相続財産が1億6千万円以下であれば、全財産を配偶者に相続してもらえば、相続税が0になる、ということです。
スゴい特例ですよね。
これは、配偶者の方がその相続財産を夫婦で一緒に築き上げてきた功績を認めてのことなんです。
想う相続税理士
配偶者の
税額軽減を
使う場合は
二次相続に
注意
この配偶者の税額軽減は、一次相続での相続税を劇的に安くする効果があるんですが、配偶者が財産をいっぱい相続すると、今度は二次相続の時に相続税が跳ね上がってしまいます。
実は、税務署もそれを分かっていて、二次相続で税金がとれるから、一次相続では配偶者の税金を安くしてくれるんです。
二次相続
まで含めた
試算を
する
一次相続だけ考える短期的視野だと、税務署の思うツボです。
二次相続まで含めたトータルな試算をする必要があります。
相続人の数
の減少と
配偶者が
元々
持っている
財産が
相続税増大
の要因
配偶者が元々財産をたくさんお持ちだと、それだけでもお亡くなりになった場合に相続税がかかるのに、上乗せするように一次相続でガツンと財産を相続してしまうと、相続税が跳ね上がります。
また通常、二次相続は、一次相続に比べて、配偶者がお亡くなりになっている分だけ、相続人の数が減ります。
相続税の「非課税枠」である「遺産に係る基礎控除額」は法定相続人の数を元に計算するため、配偶者がいなくなる分だけ、金額が目減りします。
相続税を計算する過程において、相続税全体の額(「相続税の総額」)を計算するのですが、これは財産全体に対して税率を掛けるのではなく、法定相続分で分けっこしたものと仮定した場合に、その分けっこしたそれぞれに対して税率を掛けていきます。
大きなケーキ(ホールケーキ)に税率を掛けるのではなく、切り分けた後のケーキ(ショートケーキ)に税率を掛けてそれぞれの税額を合計するのです。
「じゃあ、結局全部に税金がかかるから、どっちだって同じじゃん。」
という声が聞こえてきそうですが、相続税の税率は、超過累進税率です。
税率を掛ける対象の財産の金額が大きければ大きいほど、税率も高くなります。
ホールケーキだと高い税率になってしまいますが、ショートケーキだと低い税率で済むのです。
相続人が多ければ、いっぱい切り分けることになるので、ショートケーキがその分小さくなり、税率が低くなるイメージです。
つまり、二次相続は、一次相続に比べて、配偶者がいなくなる分、ショートケーキが大きくなりがちなのです。
配偶者が
払った
相続税は
二次相続で
控除できる
場合がある
さて、配偶者の税額軽減と、それに関わる注意点についてお話したところで、タイトル(「配偶者が財産を取得しても配偶者の税額軽減を使わないで節税できる『場合』がある!」)の話をしたいと思います。
そうなんです。
配偶者が相続すれば、相続税の申告を条件に、配偶者の税額軽減の適用を受けることができるのですが、ワザと受けないのです。
つまり、配偶者が相続税を払うのです。
配偶者が
相続税を
払えば
その分
配偶者の
財産が減り
二次相続の
節税に
つながる
配偶者が相続税を払うということは、その分、配偶者の手元の現金が減りますので、二次相続における相続財産が減少します。
結果として、二次相続の相続税が減少します。
でも、話はこれで終わらないのです。
配偶者が
払った
相続税は
二次相続の
相続人の
相続税から
控除できる
相続税には、「相次相続控除」という特例があります。
これは、相次いで(あいついで)相続が発生した場合に、一次相続と二次相続で二重に相続税を課税してしまうとあまりにもカワイソウだ、ということで、二次相続の相続税を計算したら、そこから一次相続で配偶者が払った相続税を差し引いていいよ、一次相続で払った分の相続税はマケてあげるよ、というイメージの制度です。
配偶者の税額軽減の特例を適用すると、相続税が0になることが多いのですが、その場合、配偶者が払った相続税を差し引こうにも、0だから引けないのです。
でも、特例を受けていなければ、相続税を払っているので、差し引くことができるのです。
合わせ技で
節税効果が
高くなる
という
ところが
ミソ
配偶者が一次相続で相続税を払うことにより、配偶者の手元の現金(二次相続の課税対象となる財産)が減り、二次相続の相続税が安くなる、その安くなった相続税から、一次相続で払った相続税を差し引くことにより、さらに二次相続の相続税が安くなる、ということです。
結局、一次相続で配偶者が払った相続税が(差し引かれることにより)戻ってくるイメージですね。
配偶者が相続税を払った分だけ財産が減って、二次相続の相続税が安くなっているのにもかかわらず!
ただし
相次相続
控除は
一次相続と
二次相続の
間が空くと
使えなく
なるので
注意
相次相続控除は、二次相続が一次相続の後、10年以内に発生しないと使えません。
また、1年以内に二次相続があれば控除割合が100%ですが、1年を超えると90%・80%・・・と間が空くにつれて減少していきます。
人の「生き死に」は分からないので、実際には、節税を狙えるケースは少ないといえるでしょう。
ただし
相次相続
控除は
引ききれ
なくても
還付して
もらえない
ので注意
二次相続で相続税が600万円と計算された相続人について、相次相続控除が1,000万円適用できるとしても、
600万円△1,000万円=0円
です。
600万円△1,000万円=△400万円(還付)
ではありませんので、ご注意を。
やっぱり
相続税は
試算が
大事
想う相続税理士
亡くなった後でもできる相続税対策をご存知ですか?〔PART 1〕
生前に十分な相続税対策ができればいいんですが、例えば遺言を作るにしても、亡くなることを前提とした話を子供がしにくかったりして、なかなかできないことも多いですよね。
想う相続税理士
二次相続
(次の
相続)を
考えた
遺産分け
遺言がなかった(作ってもらえなかった)としても、相続人間でベストな遺産分けを考えて、遺産分割協議書を作れば、同じように遺産分けできますので、気を落とさないでください。
逆に、遺言がなかったことを前向きに捉えましょう。
遺言って、遺言を作る人の主観がどうしても入りますから、相続人としては、「こう分けてもらった方が良かったのになあ」ってこともあるんですよね。
もちろん、相続人全員の同意を得るのが難しい場合もあります。
遺言があればラクだったのになあ、ってことも。
でもなかったらしょうがありません。
方向性としては、二次相続(次の相続)を踏まえた遺産分けを考えましょう。
今回の相続で配偶者が相続する財産を決め、配偶者の相続(二次相続)の時に、どう遺産分けをするか決めるのです。
配偶者の税額軽減
配偶者は、法定相続分(通常は1/2)か1億6,000万円までは非課税で相続できます(申告書の提出が要件です)。
これを使って、後で相続対策しやすい財産を配偶者が非課税で相続して、配偶者の相続の時までに相続税対策ができないかを検討しましょう。
小規模宅地等の特例
住んでいる土地や事業に使っている土地は、安く評価できる特例(「小規模宅地等の特例」と言います)があります。
「小規模」と言うように、一度の相続で特例の適用を受けられる面積に限度があります。
ですから、今回の相続と二次相続で、それぞれどの土地について特例を受けると、全体で最も相続税が安くなるかを考えて遺産分けを行いましょう。
亡くなった後でもできる相続税対策をご存知ですか?〔PART 2〕
土地を
分割して
相続する
路線価の影響度合いを下げる
参考 宅地の評価単位国税庁 にも書いてあるんですが、土地は利用のされ方単位や取得者単位で評価します。路線価地域っていう場所にある土地は、路線価の高い道路に面している土地だと、評価も高くなります。
南側の表通りの路線価は高いけれど、北側の裏通りの路線価は安いっていう土地の場合、表通りの路線価と裏通りの路線価の、両方を元に評価するから土地が高くなってしまうんです。
この場合、土地の評価単位を南北に分けることができれば、北側の土地の評価をグンと下げることができます(南側の土地も裏通りに面しなくなった分ちょっと安くなります)。
不合理分割はダメ!
でも、土地の評価を安くするために、どういう風に土地を切ってもいいかって言うと、そんなことはありませんので、ご注意を。
「こんな風に土地を切っちゃったら、それぞれの土地単体じゃ使えない!」っていうような切り方だと、切っていないものとして評価することになります。
タダ貸しは貸していることになりません!
自宅の土地の隣に、貸している土地があったら、どうやって評価すると思いますか?
人に貸している土地って、利用のされ方単位で考えると、自分が使っている土地とは別の評価単位ってことになりますよね。
使っている人が違うんですから。
だから、自宅と隣の土地は、別々に評価できるんです。
でも、貸していると言っても、「タダ貸し」している場合は、いつでも「出ていけ!」って言えると思いませんか?
お金をもらっていないんですから。
だから、タダ貸ししている土地は、人に貸していない自分が自由に使える土地っていう評価になっちゃいます。
この場合には、自宅の土地も、隣の土地も、自分が使っている同じ土地、っていう取扱いになりますので、2つ合わせて評価しなくちゃダメです。
亡くなった後でもできる相続税対策をご存知ですか?〔PART 3〕
特例の
適用要件に
マッチした
人を
取得者に
する
小規模宅地等の特例
平成30年度税制改正で要件が厳しくなってしまいましたが、自宅の敷地は、「家なき子」が相続すれば、100坪まで80%オフで評価できます。
でも、「家あり子」が相続したら、0%オフです。
「家なき子」特例は、宅地を安く評価できる「小規模宅地等の特例」の一部なんですが、小規模宅地等の特例は、取得者が要件になっているものばかりなので、その要件に合わせて取得者を選択すれば、相続税が安くなります。
物納
物納は、読んで字の如く、物(相続財産)で相続税を納めるシステムです。
これ、実はスゴく有利なシステムなんです。
1,000万円の相続税を納めなくちゃいけないときに、1,000万円の土地を持っていたとします。
そうすると普通、その土地を売って、売却代金の1,000万円を国に払おうとしますよね。
でも、その1,000万円の土地の売却には、譲渡所得税がかかってしまいます。
国民健康保険税だって上がっちゃいます。
いろいろ経費もかかるので、手残りは1,000万円を下回ってしまいます。
ところが、この土地が相続した土地で、そのまま物納できれば、譲渡所得税とかかからないんです。
スゴくお得じゃないですか?
とはいえ、これは誰にでも認められるものではなくて、相続税を「現金納付できませーん」「延納(分割払い)もできませーん」って言う人だけに許されるモノなんです。
逆に言えば、「お金もない、収入もない、っていう人が相続すれば、物納ができる」ということです。
自分たちではうまく利用できないけど、いい場所にあって評価が高いって土地なんかは、取得者を考慮して、この物納の適用を検討しましょう。