【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

相続時精算課税を選択すると相続税の納税の選択肢が減り特例の適用が不可になる?

相続税専門税理士の富山です。

今回は、一定の土地を生前に相続時精算課税贈与によりもらった場合に、相続でもらう場合よりも不利になるポイントについて、お話します。


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相続税は「物納」できるが相続時精算課税贈与財産は適用不可

相続税は現金での一括納付が原則ですが、現金がない場合には一定の条件のもとでの「物納」が認められています。

物納とは、不動産や有価証券などの資産を国に引き渡すことで納税に充てる制度です。

ところが、相続時精算課税制度により生前に贈与された財産については、贈与者(特定贈与者)の死亡により相続税の課税価格に加算される一方で、その財産を相続税の物納に使うことはできません。

これは、加算された贈与財産があくまで「相続税の課税価格の算定根拠として用いられる」だけであって、形式上は相続により取得した財産ではないからです(亡くなる前にもらっていますから相続財産ではありません)。

つまり、相続税の課税価格に加算された金額によって相続税は増えるのに、物納などの救済措置は受けられないという、納税者にとって厳しい取扱いとなります。

小規模宅地等の特例も適用不可

相続税対策として広く知られている小規模宅地等の特例も、相続時精算課税贈与財産については適用がありません。

国税庁HP・タックスアンサー(一部抜粋加工)
No.4214 相続税の物納
(注) 相続時精算課税の適用を受けた財産、非上場株式等についての贈与税の納税猶予の特例の適用を受けた非上場株式等および個人の事業用資産についての贈与税の納税猶予の特例の適用を受けた事業用資産は、物納の対象とすることはできません

例えば、父と長男が、父が所有している自宅に同居しているとします。

この自宅敷地を長男が相続で取得した場合、長男は同居親族に該当しますので、一定の要件を満たせば、その自宅敷地に小規模宅地等の特例を適用することができます。

仮に、この自宅敷地の相続税評価額が1,000万円で330㎡以下だったとすると、800万円を減額して200万円で申告することができます。

相続時精算課税により贈与すると、(贈与時と相続時で評価額が変わらないと仮定すると)同じように相続税がかかるのに、この800万円の減額はできない、ということになります。

相続時の納税のシミュレーションは必須!

相続時精算課税制度は、税金先送りシステムです。

2,500万円の特別控除を適用すれば、その部分については、贈与時に贈与税がかからない代わりに、将来の相続時に相続税がかかります。

収入以上にクレジットカードで買い物をしてしまったら、その時にはお金が出ていかないので楽ですが、後で大変な目に遭います。

そのようなことは、賢明な方なら気を付けているでしょう。

それと同じようなことを、相続時精算課税により贈与を受ける場合には、考える必要があります。

相続税が高額になった場合、手元の現預金が不足していると、相続税の納税が大変です。

その相続税がいくらになるかのシミュレーションをしておかないと怖いのです。

相続税は、相続でもらった財産(例えば預金など)の中から払う方が多いかもしれませんが、不動産しかもらっていない場合にはどうすればいいのでしょうか?

もちろん、自己資金があればそこから払えます。

不動産を売って現金に換えて、それを相続税に充てる、ということも考えられますが、うまくいくとは限りません。

そのような時のために、物納があります。

しかし、相続時精算課税贈与財産は、物納できません。

相続時精算課税により不動産の贈与を受ける場合には、価格変動リスクにも留意しましょう。

想う相続税理士秘書

想う相続税理士

不動産の贈与を検討している場合には、相続時精算課税贈与財産は物納不可・小規模宅地等の特例不可、という点に留意し、慎重に課税方法を選択しましょう。

相続対策は税額を下げるだけでなく、スムーズに納税できる体制を整えることも成功のカギです。

贈与税の課税方法の選択でお悩みの方は、相続税に詳しい税理士に相談することで、納税負担も含めた最適なプランニングが可能となります。