【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

相続時精算課税により贈与された財産を処分してしまったらどうなる?

相続税専門税理士の富山です。

今回は、相続時精算課税制度を適用して贈与された財産が、贈与者の死亡時に既に処分されている場合の取扱いについて、お話します。


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贈与された財産を売却した後でも相続財産に加算される?

相続時精算課税制度を適用して贈与を受けた財産を、その後に売却・消費・除却していたとしても、贈与者が死亡して相続が発生した際には、その贈与された当時の評価額で相続財産に加算されます(基礎控除額部分を除く)。

たとえば、父から相続時精算課税制度を使って令和5年に2,000万円の土地を贈与され、受贈者がその土地を令和6年に売却し、令和7年に父が亡くなった場合には、手元には土地が残っていなかったとしても、贈与された財産(土地)が贈与時の評価額で「相続財産に持ち戻される」扱いとなり、相続税の計算対象となるのです。

これは、制度の名前にもある「相続時に精算する」というルールに基づくものであり、「財産が残っているかどうか」は関係ありません。

制度を選択した以上、その財産がどう使われたかにかかわらず、贈与時の評価額で加算される仕組みになっているのです。

ただし、その贈与された財産が「災害により被害を受けた」場合には、一定の要件を満たせば、「相続時精算課税に係る土地又は建物の価額の特例」を適用することができ、「被災価額を控除してから相続財産に持ち戻す」ことができます。

想う相続税理士秘書

加算の基準は「贈与時の評価額」

ここで注意すべきは、加算される金額はあくまでも「贈与時の評価額」であるという点です。

たとえば、不動産を贈与された後に地価が上昇しても、相続時に加算されるのは贈与時点での評価額です。

これは有利に働く場合もあれば、逆に不利になる場合もあります。

地価が上昇していた場合:贈与時の価額で加算されるため、贈与しなかった場合に比べて相続税評価額が相対的に低くなる(有利)

地価が下落していた場合:実際の価値より高い評価額で課税されるため、贈与しなかった場合に比べて税負担が増える(不利)

このように、贈与時の評価額が相続時の相続税の税額に大きな影響を与えるため、相続時精算課税制度を選択する際には、贈与財産の将来価値や資産性も視野に入れた判断が求められます。

また、相続開始時点で既に財産が存在していない場合でも、加算は必須であり(基礎控除額部分を除く)、「既に売却してしまったから課税されない」とはならない点に、特に注意が必要です。

売却や消費してしまった財産でも「相続税はかかる」

実務で多く見られるのが、贈与を受けた現金を使ってしまい、贈与者の死亡時点では手元にその現金が残っていないケースです。

このような場合でも、贈与者の死亡により相続が発生すれば、贈与を受けた当時の金額が相続財産に加算されて相続税の課税対象になります。

また、土地の贈与を受けて、その時には贈与税が非課税だったとしても、相続税の課税対象となることで、多額の相続税が発生する場合があります。

したがって、相続時精算課税制度を活用する際には、

将来の相続税の納税資金の確保

加算対象となる金額の把握とシミュレーション

贈与後の資産管理や運用の慎重な検討

が必要不可欠です。

想う相続税理士

相続時精算課税制度では、贈与された財産を受贈者が後に処分してしまっていたとしても、贈与時の評価額で相続税の課税対象に加算されるという点を忘れてはいけません。

これは、贈与の対象が不動産であっても現金であっても同様です。

制度の特性上、「相続時にすべてを精算する」という考え方が根本にあるため、財産の行方や処分の有無にかかわらず、相続税の課税対象となります。

制度を上手に活用するためには、贈与時の評価額や財産の将来価値を見極めた上で、相続時の納税も見越した資金計画を立てることが必要不可欠です。

不安がある場合は、相続税に詳しい税理士と相談しながら、制度選択と贈与後の管理方法を決めていくと安心です。