【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

相続時精算課税は夫婦間で使える?配偶者への贈与に適用できる特例とは?

相続税専門税理士の富山です。

今回は、相続時精算課税制度における「配偶者からの贈与」への適用可否について、お話します。


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相続時精算課税制度は夫婦間の贈与に使える?

相続時精算課税制度は、原則として60歳以上の父母や祖父母などから18歳以上の子や孫などに対する贈与が対象となる制度です。

そのため、「夫婦間の贈与」には適用できません。

例えば、夫が妻に対して老後の生活資金や不動産を生前に贈与したいと考えたとしても、相続時精算課税による贈与の対象にはならず、通常の暦年課税が適用されます。

この点を誤解し、「夫から妻への贈与でも2,500万円まで非課税になる」と思い込んでしまうと、贈与税が課税される予想外の事態になりかねません。

配偶者間の贈与には「贈与税の配偶者控除」という特例がある

夫婦間の贈与については、「贈与税の配偶者控除(通称『おしどり贈与』)」を利用できる場合があります。

この特例は、婚姻期間が20年以上の配偶者に対して居住用不動産、またはそれを取得するための金銭を贈与した場合、一定の要件を満たせば、2,000万円までの贈与が非課税となる制度です。

この制度のポイントは以下のとおりです。

対象はあくまで配偶者間の贈与

非課税となるのは居住用不動産またはその取得資金に限られる

婚姻期間が20年以上であることが条件

非課税枠(2,000万円)は、暦年課税の基礎控除110万円と併用可能

一度しか使えない(同じ配偶者に対しては1回限り)

例えば、夫から妻へ住宅取得資金として2,110万円を贈与した場合、2,000万円は配偶者控除、110万円は暦年課税の非課税枠を活用することで、贈与税ゼロで実質的に2,110万円を移転することが可能です。

ただし、贈与税の申告は必須です。

贈与税の申告書を提出しなければ、非課税特例は適用されません。

相続時精算課税と配偶者控除は全くの別物

相続時精算課税制度と贈与税の配偶者控除は、制度の趣旨・対象者・効果の範囲がまったく異なります。

項目 相続時精算課税制度 贈与税の配偶者控除
用途の制限 居住用不動産またはその取得資金に限る
人的要件 年齢要件有 婚姻期間要件有
相続時の持ち戻し(相続税課税)
相続時精算課税による贈与にもかかわらず、用途の制限がある(住宅取得等資金に限定)パターンもあります(「住宅取得等資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税選択の特例」)。

用途制限がある代わりに贈与者の年齢制限が撤廃されます(60歳未満でもOK)。

想う相続税理士秘書

制度の違いを正しく理解せずに贈与や申告を進めてしまうと、後から高額な贈与税が課税されるおそれもあるため、贈与の目的を明確にし、相手によって適用できる制度を見極めることが非常に大切です。

想う相続税理士

ご自身やご家族の状況に合わせて、正しく特例を適用しましょう。

どのような特例制度の適用がご自身やご家族に適しているかを判断したい場合は、相続・贈与に強い税理士に相談し、制度の適用要件と効果を正確に把握されることをお勧めします。