相続税専門税理士の富山です。
今回は、相続時精算課税による「コツコツ節税贈与」について、お話します。
相続時精算課税でも少額節税贈与が可能に
これまで、相続時精算課税制度は「多額の贈与を一度に行う制度」という印象が強く、少額贈与を希望する人には使いにくい制度とされてきました。
なぜなら、従来は贈与額がたとえ1万円でも申告が必要であり、さらに相続時には贈与された金額すべてが相続財産に加算される取扱いだったからです。
しかし、令和6年からは状況が一変しました。
令和5年度税制改正により、相続時精算課税制度にも年110万円の基礎控除が新たに設けられたことで、制度の使い勝手が大きく向上したのです。
この基礎控除の創設によって、110万円以下の贈与であれば申告不要かつ相続税の加算対象外となりました。
これにより、相続時精算課税を選択した場合でも、「毎年コツコツと節税のための少額贈与を続けたい」というニーズにも柔軟に対応できるようになったのです。
相続時精算課税でも暦年課税のように「非課税枠」が使える
以前は、「相続時精算課税を選ぶと、もう暦年課税のような非課税枠(110万円)は使えない」という認識が一般的でした。
確かに、令和5年分以前の贈与ではそのとおりでした。
しかし、今回の改正により、相続時精算課税制度でも年110万円までの基礎控除額部分の贈与については、贈与税の申告が不要となりました。
加えて、(暦年課税は生前贈与加算の対象になると、基礎控除適用部分も相続税の課税対象になるのに対して)相続時精算課税の基礎控除適用部分は、将来相続が発生した際にも相続財産に加算されません。
これにより、原則として贈与者が60歳以上で、受贈者が18歳以上の子や孫などであるという要件を満たしていれば、相続時精算課税制度を選択したまま、毎年非課税で贈与を行うことが可能となったのです。
制度選択後も柔軟な贈与設計が可能に
「相続時精算課税は一度選ぶと戻れない」というのは事実ですが、今回の改正によって、その選択による柔軟性の欠如というデメリットは大きく軽減されました。
以前は、将来的に贈与額を抑えたいと考えた場合に、「もう暦年課税には戻れないから、少額贈与には不向きでは?」という声もありました。
しかし、今では相続時精算課税制度の枠内で110万円以下の贈与を行えば、申告不要・相続税加算なしという従来の暦年課税に近い(場合によっては、暦年課税の生前贈与加算と比較すると暦年課税以上の節税も可能な)取扱いが可能となっています。
これにより、以下のような贈与ニーズにも柔軟に対応できます。
毎年コツコツと資産を移転し、将来の相続税負担を平準化したい
一時的に高額贈与を行い、その後は少額贈与に切り替えたい
想う相続税理士
迷った場合には、相続税専門の税理士に相談し、ご自身やご家族にとって最適な制度活用方法を見極めることが重要です。