相続税専門税理士の富山です。
今回は、贈与税の申告内容の開示請求手続きについて、お話します。
贈与税の申告内容は他の相続人にバレる場合がある
「親から財産をもらったことを、他の兄弟には知られたくない」
こう思っている方は意外と多いかもしれません。
でも、その贈与内容が他の相続人に開示される可能性があるということをご存知でしょうか?
相続税法第49条(相続時精算課税等に係る贈与税の申告内容の開示等)によって定められた「申告内容開示制度」があるからです。
具体的には、相続税の申告書の提出や修正申告、更正の請求をする際に、他の共同相続人が「亡くなった方から他の人に行われた贈与内容」を税務署に対して正式に開示請求をすることができるのです。
なぜ開示制度があるのか?目的は「正確な申告」のため
この制度の目的は、「正確な申告」です。
相続税の申告は、亡くなった方の亡くなった時点における財産(相続財産)だけでは計算できません。
たとえば、父の相続で財産を取得した長女が、相続開始前3年以内に暦年課税による贈与により父からA株式を取得していた場合、そのA株式も含めて相続税の計算をしないと、正しい相続税は計算できません。
たとえば、二女が相続時精算課税による贈与により、亡くなった父からB株式を取得していた場合、そのB株式も含めて相続税の計算をしないと、正しい相続税は計算できません。
生前に一定の贈与を受けていたにもかかわらず、それを隠されて相続税の計算をすると、本来払うべき税額よりも少なくなってしまうリスクがあります。
そこで、他の相続人が「長女・二女は生前に贈与を受けていたはずだ」と疑問を抱いたとき、税務署に対してその贈与内容を開示請求できる仕組みが設けられているのです。
相続時精算課税による贈与は期間無制限で開示対象
開示される金額は、以下のとおりです。
相続税法第49条 相続時精算課税等に係る贈与税の申告内容の開示等(一部抜粋加工)
一 他の共同相続人等が当該被相続人から贈与により取得した次に掲げる加算対象贈与財産(第19条第1項に規定する加算対象贈与財産をいう。以下この号において同じ。)の区分に応じそれぞれ次に定める贈与税の課税価格に係る金額の合計額
イ 相続の開始前3年以内に取得した加算対象贈与財産 贈与税の申告書に記載された贈与税の課税価格の合計額
ロ イに掲げる加算対象贈与財産以外の加算対象贈与財産 贈与税の申告書に記載された贈与税の課税価格の合計額から100万円を控除した残額
二 他の共同相続人等が当該被相続人から贈与により取得した第21条の9第(相続時精算課税の選択)3項の規定の適用を受けた財産に係る贈与税の申告書に記載された第21条の11の2第1項の規定による控除後の贈与税の課税価格の合計額
暦年課税による贈与の場合、相続開始前7年以内(現在は3年以内)の贈与財産が対象です。
相続時精算課税による贈与の場合には、加算対象期間の定めがありません。
当然です。
相続時精算課税による贈与は、何年前の贈与でも相続税の課税対象になるからです。
それに対して、暦年課税による贈与は、7年を経過してしまえば、相続税の課税対象ではありませんので、開示対象から除外されます。
暦年課税による贈与は、多額の贈与を受けていても、時が経過すれば、他の相続人にバレない可能性があるのです。
想う相続税理士