【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

失踪宣告後に現れた行方不明者の相続税の申告期限はいつになる?

相続税専門税理士の富山です。

今回は、失踪宣告取消し後の相続税申告について、お話します。


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生死不明者に対する失踪宣告制度

行方不明で生きているかどうか分からない、という方がいる場合(それで困ることもあります)、一定の手続きにより、その方を死亡したものとみなす制度があります(「失踪宣告」といいます)。

裁判所HP(一部抜粋)
失踪宣告
1. 概要
不在者(従来の住所又は居所を去り、容易に戻る見込みのない者)につき、その生死が7年間明らかでないとき(普通失踪)、又は戦争、船舶の沈没、震災などの死亡の原因となる危難に遭遇しその危難が去った後その生死が1年間明らかでないとき(危難失踪)は、家庭裁判所は、申立てにより、失踪宣告をすることができます。
失踪宣告とは、生死不明の者に対して、法律上死亡したものとみなす効果を生じさせる制度です。

法律上有効にそのような手続きが行われたとしても、実際には生きている場合もあります。

そのような場合には、失踪宣告の取消しの審判の申立てをし、その審判が確定すれば、過去にさかのぼって「死亡していない(死亡していなかった)」ということになります。

失踪宣告の取り消しがあった場合の相続税の申告期限

過去にさかのぼって「死亡していない」ことになった方が相続人に該当し、相続で財産を取得することになり、相続税の申告が必要になったとします。

この場合、相続税の申告期限はいつになるのでしょうか?

出典:TAINS(相続事例大阪局WAN2705)(一部抜粋加工)
失踪宣告と相続の開始のあったことを知った日
【照会要旨】
行方不明のため失踪宣告を受けていた甲は、姉が平成元年に死亡したことを平成12年になってから人づてに聞いて知った。
甲は、姉に配偶者、子及び両親がいないため自分に相続権があると思ったが、失踪宣告を受けていることが分かったので、平成13年に失踪宣告の取消しを受けたうえで姉の遺産を相続した。
甲が提出しなければならない相続税の申告書の提出期限について相続税法第27条第1項に規定する「相続の開始があったことを知った日」は、いつになるか。
【回答要旨】
失踪宣告の取消しのあったことを知った日を「相続の開始のあったことを知った日」とする。
(注)失踪宣告(取消)に対して2週間以内に即時抗告ができることとされておりこの期間を経過し審判が確定しなければ失踪宣告(取消)の効力が生じないこととされていることから、「失踪宣告があったことを知った日」とは、宣告(取消)が確定した日である。

上記の「相続税法第21条第1項」は、次のような規定になっています。

相続税法(一部抜粋加工)
第27条 相続税の申告書
相続又は遺贈により財産を取得した者及び当該被相続人に係る相続時精算課税適用者は、当該被相続人からこれらの事由により財産を取得したすべての者に係る相続税の課税価格の合計額がその遺産に係る基礎控除額を超える場合において、その者に係る相続税の課税価格に係る第15条から第19条まで、第19条の3から第20条の2まで及び第21条の14から第21条の18までの規定による相続税額があるときは、その相続の開始があつたことを知つた日の翌日から10月以内に課税価格、相続税額その他財務省令で定める事項を記載した申告書を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。

つまり、「ある日」の翌日から10ヶ月目が相続税の申告期限になるのですが、その「ある日」とは、「相続の開始があったことを知った日」、つまり、「死亡したことを知った日」です。

通常は、すぐに死亡の事実を知ることになりますから、「死亡した日」「死亡したことを知った日」になるでしょう。

では、行方不明になっていて突如現れた方の「相続の開始があったことを知った日」はいつなのかというと、どこからか現れて、人から死亡を知らされて、または、何かを見て死亡を知ったとしても、その実際に知った時点では、まだ「法律上死亡した人」であるため、ある意味、法律上は「『死亡した』ことを知ることができない状態である」ということになるものと思われます。

失踪宣告の取消しの審判の申立てをし、その審判が確定した時点が、(効力的にはさかのぼるのですが)法律上は「『死亡していなかった』ことになり、そこで初めて死亡を知ることができる状態になった」ので、その時点(取消審判確定時点)が「死亡したことを知った日」になる、ということになるものと思われます。

想う相続税理士

失踪宣告の取消しの審判が確定しただけで「法律上、生き返った!」と安心してはいけません。

申立人の方(行方不明だった方またはその方の利害関係者)には、戸籍法による届出義務があり、審判が確定してから10日以内に、市区町村役場に失踪の届出をして、それ(「本当は死亡していないこと」)を戸籍に反映させる必要があります。