相続税専門税理士の富山です。
今回は、交通事故により亡くなった方が、その交通事故の加害者であり、相続人の方がその交通事故の被害者の方に見舞金等を支払った場合に、その見舞金等が相続税の申告において債務控除の対象になるか、ということについて、お話します。
亡くなった方の債務は相続税の申告において財産から控除できる
民法
(相続の一般的効力)
第八百九十六条 相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。
相続人の方は、亡くなった方の財産を相続する権利を得るのと一緒に、その債務を負担する義務も承継します。
相続税の申告においては、その相続人の方が負担することとなる債務を、土地や預貯金などの財産の金額から控除して課税価格(相続税の対象となる金額)を計算します。
相続税法(一部抜粋加工)
第13条 債務控除
相続又は遺贈(包括遺贈及び被相続人からの相続人に対する遺贈に限る。以下この条において同じ。)により財産を取得した者が第1条の3第1項第1号又は第2号の規定に該当する者である場合においては、当該相続又は遺贈により取得した財産については、課税価格に算入すべき価額は、当該財産の価額から次に掲げるものの金額のうちその者の負担に属する部分の金額を控除した金額による。
一 被相続人の債務で相続開始の際現に存するもの(公租公課を含む。)
二 被相続人に係る葬式費用
亡くなった時の事故に起因する損害賠償金は債務控除の対象?
交通事故により亡くなった方が、その交通事故の加害者であり、相続人の方がその交通事故の被害者の方に見舞金等を支払った場合、その見舞金等は、上記の「被相続人の債務で相続開始の際現に存するもの」に該当するのでしょうか?
国税庁HP・質疑応答事例(一部抜粋)
加害者が死亡した場合における損害賠償金についての債務控除
【照会要旨】
被相続人が運転する自動車で交通事故を起こし、被相続人は即死し、同乗していた被相続人の配偶者の妹は現在入院加療中です。
そこで、配偶者は、妹に対して見舞金、治療費などとして300万円を支払いましたが、この金額は、相続税の計算上債務として控除できますか。
【回答要旨】
交通事故が被相続人の過失に基づくものであれば、被相続人は加害者としての損害賠償の責任を負って死亡したことになり、相続人はその責任を相続により承継することになります(民法896)。
照会の場合の妹に対する見舞金が、この損害賠償責任の範囲内のものと認められるときには、被相続人の債務に該当します。
亡くなった方に過失があり、その過失に基づき加害者に見舞金等が支払われ、その金額に問題がなければ、債務控除の対象となります。
想う相続税理士