相続税専門税理士の富山です。
今回は、相続税の申告書の共同提出及び相続税の連帯納付義務について、お話します。
相続税の申告書は共同して提出することが「できる」
相続税法(一部抜粋加工)
第27条 相続税の申告書
5 同一の被相続人から相続又は遺贈により財産を取得した者又はその者の相続人で第1項、第2項(次条第2項において準用する場合を含む。)又は第3項の規定により申告書を提出すべきもの又は提出することができるものが2人以上ある場合において、当該申告書の提出先の税務署長が同一であるときは、これらの者は、政令で定めるところにより、当該申告書を共同して提出することができる。
相続税の申告書第1表を見ると、右側に「財産を取得した人」の欄があり、同じ欄が第1表(続)でずっとつながっていきます。
多くの場合、相続人や受遺者の方は、各人が個別に相続税の申告をするのではなく、共同で1つの申告書を作成し、提出します。
しかし、相続税法上は、それが原則という訳ではなく、共同で提出してもいいよ(「できる」)と規定されているのです。
共同で(電子申告ではなく)書面により申告書を提出する場合には、通常、各相続人や受遺者の方全員が、1つの申告書に皆さんで署名することになります。
相続税法施行令(一部抜粋加工)
第7条 申告書の共同提出
法第27条第5項(法第29条第2項において準用する場合を含む。)の規定により2人以上の者が共同して行う法第27条第1項又は第2項(法第28条第2項及び第29条第2項において準用する場合を含む。)の申告書の提出は、これらの者が一の申告書に連署してするものとする。
話がまとまらなくても相続税の申告は期限までにしないとダメ
共同で提出することが原則ではないのですから、「遺産分けがまとまらないので共同で申告書を提出できない、だからもうちょっと待って」というのは、税務署には全く通用しません。
相続税の納税義務があるのであれば、亡くなった方の財産の内容が全く分からなくても、たとえ単独で提出することになっても、できる範囲・分かる範囲で相続税の申告を期限までにする必要があるのです。
もちろん、各相続人や受遺者が話を合わせることなく、バラバラに(勝手に)申告したら、相続財産の内容や評価は異なることになるかもしれません。
それでも、税務署がどう言うか(後から言ってくるか)は別として、申告はちゃんとしなければならないのです。
相続税の連帯納付義務はいつ発生する?
自分は何とかして、分かる範囲で申告したのに、全く何もしない(申告しない)相続人がいるとします。
相続税法(一部抜粋加工)
第34条 連帯納付の義務等
同一の被相続人から相続又は遺贈(第21条の9第3項の規定の適用を受ける財産に係る贈与を含む。以下この項及び次項において同じ。)により財産を取得した全ての者は、その相続又は遺贈により取得した財産に係る相続税について、当該相続又は遺贈により受けた利益の価額に相当する金額を限度として、互いに連帯納付の責めに任ずる。
相続税には「連帯納付義務」があるのですが、その全く何もしない相続人の分の相続税はどうなるのでしょうか?
単独で申告するとすぐに、その何もしない相続人の分の相続税まで納付することになってしまうのでしょうか?
5 税務署長は、納税義務者の相続税につき当該納税義務者に対し国税通則法第37条(督促)の規定による督促をした場合において当該相続税が当該督促に係る督促状を発した日から1月を経過する日までに完納されないときは、同条の規定にかかわらず、当該相続税に係る連帯納付義務者に対し、当該相続税が完納されていない旨その他の財務省令で定める事項を通知するものとする。
督促状が発送されて、それから1ヶ月経ってもちゃんと納付されない場合に限り、連帯納付義務を履行するように請求されます。
想う相続税理士
国税通則法(一部抜粋)
第37条 督促
2 前項の督促状は、国税に関する法律に別段の定めがあるものを除き、その国税の納期限から50日以内に発するものとする。