相続税専門税理士の富山です。
今回は、亡くなった方がアパートなどの不動産賃貸物件を所有されていた場合における、その家賃収入の取扱いについて、お話します。
支払期日が到来していない受取家賃は日割計上不要
国税庁HP・質疑応答事例(一部抜粋加工)
支払期日未到来の既経過家賃と相続財産
【照会要旨】
アパートの賃貸を業務としている者が本年4月24日に死亡しました。
賃貸借契約において、そのアパートの賃貸料の支払期日は、毎月の末日とする旨が明定されており、その契約に従って賃貸料が支払われてきました。未収家賃はありません。
4月分の家賃は、4月30日に相続人が収受しましたが、その家賃のうち4月1日から24日までの期間に対応する既経過分の家賃については、相続税の課税価格に算入する必要がありますか。
【回答要旨】
死亡した日においてその月の家賃の支払期日が到来していない場合は、既経過分の家賃相当額を相続税の課税価格に算入しなくて差し支えありません。
上記の例で言うと、4月24日に死亡したということは、亡くなった方が、4月1日から4月24日までの24日間、アパートを賃貸していた、ということになりますので、亡くなった方には、その24日分の家賃を受け取る権利が発生していた、その権利相当額は相続財産として計上すべきだ、とお思いになる方もいらっしゃるかもしれませんが、4月24日時点で、入居者に24日分の家賃を請求できるかというと、そんなことはありません。
(入居者がその日に退居するなら別ですが)「月末に払う約束でしょ!まだ払わないよ!」と入居者に言われたら、言い返せないハズです。
請求できないのですから、相続税の申告において、権利(債権)として財産計上する必要はありません。
来月分の家賃をもらっている場合には債務控除可能?
上記の例では、「賃貸借契約において、そのアパートの賃貸料の支払期日は、『毎月の末日とする』旨が明定されて」いるのですが、これが、「前月の15日とする」となっていたとします。
そして、契約どおり、4月15日に5月分の家賃を受け取っていたとします。
その後、4月24日に死亡したという場合には、亡くなった方が、4月24日までしかアパートを賃貸していないのに、その後の5月分の家賃も(貸していないのに)受け取っていた、ということになるため、相続税の申告のために4月24日でいったん締めて債権・債務を考えると、亡くなった方が貸していない期間の家賃を受け取る訳にはいかないので、これは返還すべき家賃であり、相続税の申告においても、返済すべき借入金のように債務として計上する(債務控除する)ことができるのでしょうか?
結論から言うと、債務控除はできません。
4月15日に受け取った5月分の家賃は、4月24日において亡くなった方が返還すべきものではないからです。
なぜなら、契約どおりに入金されたものだからです。
契約どおりに入金されたものは、返還すべき必要がないからです。
想う相続税理士
財産評価基本通達(一部抜粋)
203 預貯金の評価
預貯金の価額は、課税時期における預入高と同時期現在において解約するとした場合に既経過利子の額として支払を受けることができる金額(以下203《預貯金の評価》において「既経過利子の額」という。)から当該金額につき源泉徴収されるべき所得税の額に相当する金額を控除した金額との合計額によって評価する。
ただし、定期預金、定期郵便貯金及び定額郵便貯金以外の預貯金については、課税時期現在の既経過利子の額が少額なものに限り、同時期現在の預入高によって評価する。