【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

相続時精算課税適用者が特定贈与者よりも先に死亡した場合の取扱い

相続税専門税理士の富山です。

今回は、相続時精算課税適用者が特定贈与者よりも先に死亡した場合における、その相続時精算課税の適用に伴う権利義務の承継について、お話します。

出典:TAINS(資産課税課情報R050600-007)(一部抜粋加工)
資産課税課情報 第7号 「資産税質疑事例集」 令和5年6月作成


相続税専門税理士に任せてスッキリ!
相続税専門税理士が直接対応
事前予約で土日祝日夜間対応可能
明確な料金体系+スピード対応

または はこちらから


相続時に課税を精算する前に贈与財産の取得者が亡くなった場合

相続税法(一部抜粋)
第21条の17 相続時精算課税に係る相続税の納付義務の承継等
特定贈与者の死亡以前に当該特定贈与者に係る相続時精算課税適用者が死亡した場合には、当該相続時精算課税適用者の相続人(包括受遺者を含む。以下この条及び次条において同じ。)は、当該相続時精算課税適用者が有していたこの節の規定の適用を受けていたことに伴う納税に係る権利又は義務を承継する。ただし、当該相続人のうちに当該特定贈与者がある場合には、当該特定贈与者は、当該納税に係る権利又は義務については、これを承継しない。

母Aさんから相続時精算課税による贈与を受けた長男Bさんが母Aさんよりも先に死亡した場合、相続時精算課税は課税を将来(相続時)に先送りする仕組みになっており、贈与を受けた時点では課税が完結していないため、課税上「長男Bさんが母Aさんから相続時精算課税による贈与により財産を取得した」という事実に基づく、「将来の母Aさん相続の際の、本来は長男Bさんに課せられる申告納税義務(付与される還付の権利を含む)」を、誰かが引き継ぐ(承継する)必要があります。

相続時精算課税適用者の相続人が特定贈与者のみの場合

相続税法基本通達(一部抜粋)
21の17-3 相続人が特定贈与者のみである場合
相続時精算課税適用者の相続人が特定贈与者のみである場合には、相続時精算課税の適用に伴う権利義務は当該特定贈与者及び当該相続時精算課税適用者の民法第889条《直系尊属及び兄弟姉妹の相続権》の規定による後順位の相続人となる他の者には承継されないのであるから留意する。
したがって、この場合には、当該特定贈与者の死亡に係る当該相続時精算課税適用者の相続税の申告は必要がないこととなる。

長男Bさんが独身でお子さんがいない、かつ、長男Bさんのお父様が既に亡くなっている、という場合、長男Bさんの相続人は特定贈与者である母Aさんのみ、ということになります。

この場合、母Aさんは、上記の「将来の母Aさん相続の際の、本来は長男Bさんに課せられる申告納税義務(付与される還付の権利を含む)」を承継しません。

本来であれば相続税が(長男Bさんに)還付される場合でも、代わりに還付を受けることもできません。

特定贈与者が相続放棄をしたらどうなる?

長男Bさんには、長女Cさん・次女Dさんという兄弟姉妹がいたとします。

上記の母Aさんが、長男Bさんの相続について、相続放棄をしたらどうなるでしょうか?

長男Bの死亡により、長女C及び次女Dは相続時精算課税の適用に伴う権利義務の2分の1をそれぞれ承継する。

この場合には、長女Cさん・次女Dさんがその権利義務を承継します。

承継相続人が特定贈与者よりも先に死亡した場合

長女Cさんには、お子さん(母Aさんから見た孫Eさん・孫Fさん)がいたとします。

その後、母Aさんが死亡する前に、長女Cさんが死亡した場合にはどうなるでしょうか?

長女Cの死亡により、孫E及び孫Fが相続時精算課税の適用に伴う権利義務の4分の1をそれぞれ承継する。

この場合(承継相続人である長女Cさんが死亡した場合)には、再承継相続人である孫Eさん・孫Fさんがその権利義務を承継します。

想う相続税理士

相続放棄をする場合には、相続時精算課税の適用に伴う権利義務の承継にも留意しましょう。