相続税専門税理士の富山です。
今回は、相続税の申告をする際、必ず遺産分割協議書を作成してそのコピーを添付しなければならないか、ということについて、お話します。
各人の相続税を計算するために必要
遺産分割協議書は、相続人間で遺産分けの話し合いをまとめた結果を証明する書類です。
相続税は、財産の取得割合に応じて計算されます。
ザックリ言うと、全体の財産に対する相続税が1,000万円だとすると、その全体の財産の40%を相続した方は、1,000万円×40%=400万円の相続税を納めることになります。
評価額が高い財産を相続すれば、その分、相続税(相続税の負担割合)も高くなる、ということです。
全体の相続税を各人に割り振るためには、財産の取得割合を計算しなければならない、そのためには、誰がどの財産を相続で取得したかを明確にしなければならない、そのためには、遺産分割協議書のコピーを相続税の申告書に添付する必要がある、ということです。
特例の適用を受けるための要件にもなっている
相続税の申告には、「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地等の特例」という特例がありますが、これらの特例には「取得者」の要件があります。
つまり、「Aさんが取得すれば適用できるけど、Bさんだとダメ」というようなことがある、ということです。
そこで、Aさんが取得した、ということを明らかにするために、相続税の申告書に遺産分割協議書のコピーを添付する必要があります(これらの特例の適用を受けるためには、相続税の申告書に遺産分割協議書のコピーを添付することが「要件」となっているのです)。
遺言があれば遺言が優先される
亡くなった方の遺言がある場合、原則として、その遺言のとおりに遺産分けをすることになります。
その場合には、遺産分割協議書を作成する必要はありません。
相続税の申告書にも、遺産分割協議書のコピーの代わりに遺言書のコピーを添付することになります。
相続人がお一人の場合
亡くなった方の相続人がお一人の場合には、原則として、その方が全財産を相続することになりますので、遺産分割協議書を作成する必要はありません。
相続人以外の方が遺言で財産を取得する場合には、その遺言書のコピーを添付することになります。
相続税の申告期限までに遺産分けがまとまらない場合
相続税の申告期限は、亡くなったことを知った日(通常の場合は、死亡の日)の翌日から10ヶ月以内です。
この期間内に遺産分けがまとまらなかった場合でも、相続財産の金額が一定金額以上あるような場合には、相続税の申告が必要となります。
その場合には、遺産分割協議書が作成できませんので、相続税の申告書にも添付できません。
このような場合には、各相続人の方などが、民法に規定する相続分または包括遺贈の割合に従って財産を取得したものとして相続税の計算をし、申告・納付をすることになります。
相続税の申告期限後に遺産分けがまとまれば、その時に遺産分割協議書のコピーを添付して相続税の申告(修正申告・更正の請求)を再度することができます。
この時に「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地等の特例」の適用を受けるためには、最初の申告の際に「申告期限後3年以内の分割見込書」も一緒に提出しておく必要があります。
想う相続税理士