相続税専門税理士の富山です。
今回は、相続で財産を取得した方の所得税の確定申告の要否について、お話します。
相続で財産を取得したら相続税
相続で財産を取得し、相続財産の金額が相続税の非課税枠(「遺産に係る基礎控除額」と言います)を超えるなど一定の場合に該当するときは、相続税の申告・納付が必要となります。
また、「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地等の特例」の適用を受ける場合には、相続税の申告が要件となっています。
これらの特例の適用を受けて、相続税がゼロになる場合でもです。
相続税がかからなかったら所得税がかかる?
お客様に、上記の「特例の適用を受けて相続税がゼロになった」ことをお伝えすると、「じゃあ、(相続税は払わなくて済むけど)所得税を払うことになるんでしょうか?」と質問されることがあります。
相続財産の金額が一定金額以下だった、または、一定金額を超えていたけど、特例の適用により相続税がかからなかった、という場合、それにより所得税を払うことになる、ということはありません。
しかし、相続を起因として所得税がかかる場合があります。
生命保険契約の保険料負担者に注意(実話)
今回、Aさんがお亡くなりになり、相続人であるBさんが財産を取得したとします。
Aさんの相続財産は相続税の非課税枠よりもずっと少なかったため、相続税はかかりません。
税務署から「相続についてのお尋ね」も送られてきません。
ところが、相続があってからしばらくして、税務署から「税務調査をしたい」と連絡がありました。
その税務調査で指摘されたのは、生命保険契約です。
Aさんがお亡くなりになった際、Bさんは生命保険金を受け取りました。
被保険者がAさんになっていたからです。
その生命保険金の金額を含めて計算しても、Aさんの相続財産は相続税の非課税枠よりもずっと少なかったので、Bさんは相続税の申告をしなかったのですが、税務調査が来ました。
実は、この生命保険金は、相続税の課税対象ではなく、所得税の課税対象だったのです。
Bさんがその生命保険契約に係る保険料を負担していたのです。
Bさんは、「相続が発生してもらったモノには相続税がかかる」と思っていたので、この生命保険金も相続税の課税対象だと考えていたのです。
しかし、Bさんが保険料を負担して、Bさんが生命保険金を受け取っていますから、これはBさんの収入(所得)です。
Bさんの所得税の課税対象(一時所得、年金受け取りの場合には雑所得)となります。
想う相続税理士