相続税専門税理士の富山です。
今回は、特別受益に該当する相続時精算課税贈与がある場合の相続税の未分割申告について、お話します。
コンテンツ
相続税は財産の取得割合に応じて納税する
相続税は、「相続税の総額」という相続財産全体に対する相続税を計算して、それを財産の取得割合に応じて按分して納付します。
相続が発生し、相続人が長女・二女の2人で、長女が全体の財産の60%、二女が残りの40%を相続したとします。
相続税の総額が1,000万円だとすると、長女は1,000万円×60%=600万円、二女は1,000万円×40%=400万円の相続税を納付することになります(他の計算要素がないものと仮定)。
遺産分けの話し合いがまとまらなかったら?
上記でお話したように、相続財産全体に対する相続税を、財産の取得割合に応じて按分することにより、各相続人の方などが納付する相続税を計算します。
財産の取得割合が決まっていなかったら、つまり、遺産分けの話し合いがまとまらなかったら、どうなるのでしょうか?
相続税の申告期限は10ヶ月
相続税の申告は、亡くなったことを知った日(通常の場合は、死亡の日)の翌日から10ヶ月以内にするしなければなりません。
相続税の申告期限は延長できる?
相続税の申告期限は、原則として延長できません(災害その他やむを得ない理由がある場合を除く)。
遺産分けの話し合いがまとまらない場合には、相続税の申告期限を延長できるのでしょうか?
法定相続分で遺産分けしたものとして申告する
遺産分けの話し合いがまとまらなくても、10ヶ月以内に相続税の申告・納付をしなければなりません。
このような場合には、各相続人の方などが、民法に規定する相続分または包括遺贈の割合に従って財産を取得したものとして相続税の計算をし、申告・納付をすることになります。
特別受益に該当する相続時精算課税贈与がある場合
相続が発生し、相続人が長女・二女の2人で、相続財産が1億円だったとします。
遺産分けの話し合いがまとまらない場合、長女・二女が
二女:1億円×1/2(二女の法定相続分)=5,000万円
この他に、長女が相続時精算課税による贈与で、2,000万円の現金をもらっていたとします。
民法(一部抜粋加工)
(特別受益者の相続分)
第九百三条 共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。
この贈与が「婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として」の贈与(「特別受益」)に該当する場合、長女・二女は
4,000万円+相続時精算課税適用財産2,000万円=6,000万円
二女:(1億円+2,000万円)×1/2=6,000万円
1億円+相続時精算課税適用財産2,000万円=1億2,000万円に対する相続税を、半分(6,000万円/1億2,000万円=50%)ずつ納付することになります。
想う相続税理士