相続税専門税理士の富山です。
今回は、数次相続があった場合の取扱いについて、お話します。
数次相続とは?
父Aさんが亡くなり、その父Aさんの相続人が、配偶者である母Bさん・長女Cさん・二女Dさんだとします。
父Aさんの遺産については、相続人である母Bさん・長女Cさん・二女Dさんが遺産分割協議を行い、遺産分けを決めます。
その遺産分割協議が成立する前に、二女Dさんが亡くなってしまったとします。
このように、相続が発生し、その相続に係る遺産分割協議が成立する前に、相続人の方に相続が発生することを「数次相続」と言います。
数次相続で相続人はどう変わる?
父Aさんの遺産については、二女Dさんが亡くならなければ、母Bさん・長女Cさん・二女Dさんが遺産分割協議を行うハズでした。
その遺産分割協議が成立すれば、3人の署名押印がある遺産分割協議書を元に、父Aさんの遺産の相続手続きが行える予定でした。
ところが、二女Dさんが亡くなってしまったため、遺産分割協議書に二女Dさんの署名押印をもらうことができません。
ということは、父Aさんの遺産については、もう遺産分けをすることができないのでしょうか?
そんなことはありません。
二女Dさんがご結婚されていて、夫Eさん・お二人の間の長男Fさんがいらっしゃる場合、その夫Eさん・長男Fさんが二女Dさんの代わりに相続人となります。
途中まで進んでいた遺産分割協議がひっくり返ることがある
父Aさんの遺産に係る遺産分けについて、(二女Dさんの生前に)母Bさん・長女Cさん・二女Dさんの間で「全財産を長女Cさんが相続する」という内容で大方決まっていたとします。
でも、二女Dさんの代わりに遺産分割協議に参加したEさん・長男Fさんが、「自分たちも財産が欲しい。全財産を長女Cさんが相続するというのなら、自分たちは遺産分割協議書に署名押印しない」と言ったら、(大方3人の間では決まっていた)「全財産を長女Cさんが相続する」という遺産分けは(二人が反対する限り)成立しません。
「法定相続人の数」は変わらない
相続税の計算においては、「遺産に係る基礎控除額」という相続税の非課税枠があり、
3,000万円+600万円×法定相続人の数
で計算されます。
父Aさんの相続に係る遺産分割協議に参加する相続人(法定相続人)は、母Bさん・長女Cさん・夫Eさん・長男Fさんの4人ですが、上記算式の「法定相続人の数」は、父Aさんに相続が発生した時点における相続人の数ですので、母Bさん・長女Cさん・二女Dさんの3人となり、遺産に係る基礎控除額は、
3,000万円+600万円×3人=4,800万円
と計算されます。
相続税の申告期限が変わる
相続税法(一部抜粋)
第27条 相続税の申告書
2 前項の規定により申告書を提出すべき者が当該申告書の提出期限前に当該申告書を提出しないで死亡した場合には、その者の相続人は、その相続の開始があつたことを知つた日の翌日から10月以内に、政令で定めるところにより、その死亡した者に係る前項の申告書をその死亡した者の納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。
父Aさんの相続に係る相続税の申告期限は、夫Eさん・長男Fさんについては、二女Dさんが死亡したことを知った日(通常の場合は、二女Dさんの死亡の日)の翌日から10ヶ月以内となります。
想う相続税理士
上記の例で言えば、父Aさんが死亡する前に、二女Dさんが死亡していた場合に、長男Fさんが代わりに相続人となることを代襲相続と言います。
この場合、夫Eさんは相続人にはなりません。
民法(一部抜粋)
(子及びその代襲者等の相続権)
第八百八十七条
2 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。