【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

「一時的な空室」適用はアパート・マンションはOKだが一戸建ての貸家はダメ

相続税専門税理士の富山です。

今回は、貸家建付地の評価における「一時的な空室」適用について、お話します。


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貸家の敷地の用に供されている宅地は評価額が安くなる

相続税の申告において、アパートなどの貸家の敷地(「貸家建付地」と言います)は、自分で使っている土地や更地等に比べて、評価額が下がります。

国税庁HP・タックスアンサー(一部抜粋加工)
No.4614 貸家建付地の評価
貸家建付地の価額は、次の算式で求めた金額により評価します。
貸家建付地の価額=自用地としての価額-自用地としての価額×借地権割合×借家権割合×賃貸割合

更地だと1,000万円の宅地も、そこにアパートを建てて、満室で、借地権割合が40%(借家権割合は30%)だったら、
1,000万円△1,000万円×40%×30%×100%=880万円
となり、評価額が12%下がります。

貸家建付地の評価には「一時的な空室」という考え方がある

立地が良く人気があっていつも満室のアパート(部屋数は10室)があるとします。

その入居者の一人の方が会社の転勤でちょうど退居した時に、そのアパートのオーナーに相続が発生したとします。

相続開始時点では1室の空室があった、ということです。

貸家建付地の評価は、上記の式にあるとおり、「賃貸割合」を加味します。

10室あって1室空室と言うことは、ザックリ言うと賃貸割合は90%です(賃貸割合は実際には床面積比で計算します)。

100%控除できず、90%しか控除できない、ということになると、その分、満室の時に比べて評価額が高くなってしまいます。

しかし、この空室が

国税庁HP・質疑応答事例(一部抜粋加工)
貸家建付地等の評価における一時的な空室の範囲
「継続的に賃貸されてきたもので、課税時期(相続開始時点)において、一時的に賃貸されていなかったと認められる」

場合には、空室ではなく賃貸されていたモノとして評価することができます。

一戸建ての貸家には「一時的な空室」の考え方はない

立地が良く人気があっていつも入居者がいる一戸建ての貸家があるとします。

その入居者の方が会社の転勤でちょうど退居した時に、その貸家のオーナーに相続が発生したとします。

相続開始時点では空室(空き家)だった、ということです。

この場合には、貸家建付地評価はできません。

理論上、入居者がいないのであれば、その敷地はオーナーの方が自由に処分・使用できた状態だった、ということになります。

したがって、安く評価する理由がないのです。

想う相続税理士

上記の質疑応答事例は、学生専用の賃貸アパートの事例が掲載されているのですが、回答要旨に「課税時期において、アパートの一部に借家人がいることから、貸家及び貸家建付地として評価します」とあり(つまり、全部が空室ではない、という前提)、その後に「継続的に賃貸されてきたもので、課税時期において、一時的に賃貸されていなかったと認められる各独立部分がある場合」の説明があります。

一戸建ての貸家と違い、アパート・マンションの場合には、1室が空室でも、9室に入居者がいれば、その敷地はオーナーの方が自由に処分・使用できない、だから、(空室があっても)貸家建付地評価でいい、さらに、その空室が「一時的な空室」に該当すれば、空室扱いにしなくていい(賃貸されていたモノとして扱っていい)という理論構成のようです。