相続税専門税理士の富山です。
今回は、相続財産の中に同族会社の株式等の非上場株式がある場合、その株式が「比準要素数1の会社」の株式に該当するかどうかの判断上の注意点について、お話します。
フツーに評価しちゃダメな場合がある
相続財産の中に親族でやっている同族会社の株式等(非上場株式)がある場合、その評価方法は、その会社の規模等により一定のパターン・原則(財産評価基本通達179 取引相場のない株式の評価の原則)があるのですが、そのパターンに当てはめて評価してはいけない下記のケースがあります。
財産評価基本通達(一部抜粋加工)
189 特定の評価会社の株式
178《取引相場のない株式の評価上の区分》の「特定の評価会社の株式」とは、評価会社の資産の保有状況、営業の状態等に応じて定めた次に掲げる評価会社の株式をいい、その株式の価額は、次に掲げる区分に従い、それぞれ次に掲げるところによる。
なお、評価会社が、次の(2)又は(3)に該当する評価会社かどうかを判定する場合において、課税時期前において合理的な理由もなく評価会社の資産構成に変動があり、その変動が次の(2)又は(3)に該当する評価会社と判定されることを免れるためのものと認められるときは、その変動はなかったものとして当該判定を行うものとする。
(1) 比準要素数1の会社の株式
(省略)
(2) 株式等保有特定会社の株式
(省略)
(3) 土地保有特定会社の株式
(省略)
(4) 開業後3年未満の会社等の株式
(省略)
イ 開業後3年未満であるもの
ロ 183《評価会社の1株当たりの配当金額等の計算》の(1)、(2)及び(3)に定める「1株当たりの配当金額」、「1株当たりの利益金額」及び「1株当たりの純資産価額(帳簿価額によって計算した金額)」のそれぞれの金額がいずれも0であるもの
(省略)
(5) 開業前又は休業中の会社の株式
(省略)
(6) 清算中の会社の株式
(省略)
比準要素数1の会社とは?
上記の「(1) 比準要素数1の会社」とはどのような会社なのでしょうか?
(1) 比準要素数1の会社の株式
183《評価会社の1株当たりの配当金額等の計算》の(1)、(2)及び(3)に定める「1株当たりの配当金額」、「1株当たりの利益金額」及び「1株当たりの純資産価額(帳簿価額によって計算した金額)」のそれぞれの金額のうち、いずれか2が0であり、かつ、直前々期末を基準にして同項の定めに準じそれぞれの金額を計算した場合に、それぞれの金額のうち、いずれか2以上が0である評価会社(次の(2)から(6)に該当するものを除く。以下「比準要素数1の会社」という。)の株式の価額は、次項の定めによる。
(注) 配当金額及び利益金額については、直前期末以前3年間の実績を反映して判定することになるのであるから留意する。
会社の業績や財政状態を改めて確認してみたら、「配当は出していない」、「利益も出ていない」、でも「純資産はプラスだ(債務超過ではない)」というようなケースは多いのではないでしょうか?
このような場合には、この比準要素数1の会社に該当するかもしれません。
直前期末だけで判断したら間違える!
上記を見ると、
いずれか2が0であり、かつ、直前々期末を基準にして同項の定めに準じそれぞれの金額を計算した場合に、それぞれの金額のうち、いずれか2以上が0である評価会社(次の(2)から(6)に該当するものを除く。以下「比準要素数1の会社」という。)
とあるように、直前期末だけではなく、「かつ」「直前々期末を基準にして」「いずれか2以上が0」であることが要件となります。
ですから、直前々期末を基準とした場合に、資産がプラスで、利益もプラスだったような場合には、この比準要素数1の会社には該当しません。
想う相続税理士