【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

相続開始前3年超の生前贈与は相続には関係ない?

相続税専門税理士の富山です。

今回は、相続があった場合に、生前贈与がどのように関係するかについて、お話します。


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相続で財産を取得+相続開始前3年以内に暦年課税贈与で財産を取得

相続が発生した場合に、その相続で財産を取得し、かつ、その亡くなった方から相続開始前3年以内に暦年課税贈与により財産を取得しているときは、その贈与財産の価額が、相続税の課税価格に加算されます(贈与財産が相続税の課税対象になります)。

これを「生前贈与加算」といいます。

想う相続税理士

令和5年度税制改正により、この「3年」が段々と延びて「7年」になり、相続開始前3年超部分贈与については100万円を控除した金額が加算されます(まだ先の話です)。

贈与時に贈与税を納付している場合には、贈与税と相続税がダブルで課税されると二重課税になってしまうため、生前贈与加算して計算した相続税の金額から、その贈与税の金額を控除します(控除してマイナスになっても還付を受けることはできません)。

相続時精算課税贈与で財産を取得

相続が発生した場合に、その亡くなった方から相続時精算課税贈与により財産を取得しているときは、令和5年度税制改正により新設された基礎控除額を適用した部分を除き、その贈与財産の価額が、相続税の課税価格に加算されます(贈与財産が相続税の課税対象になります)。

相続時精算課税贈与の場合、「相続開始前○年以内」という話は出てきません。

想う相続税理士秘書

想う相続税理士

相続時精算課税贈与の場合、相続で財産を取得したかどうかは関係なく、相続税の課税対象になります。

贈与時に贈与税を納付している場合には、贈与財産を含めて計算した相続税の金額から、その贈与税の金額を控除します(控除してマイナスになる場合には還付を受けることができます)。

遺産分けの話し合いの中では年数無制限

民法(一部抜粋加工)
(特別受益者の相続分)
第九百三条 共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。
2 遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺者又は受贈者は、その相続分を受けることができない。
3 被相続人が前二項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思に従う。
4 婚姻期間が二十年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたときは、当該被相続人は、その遺贈又は贈与について第一項の規定を適用しない旨の意思を表示したものと推定する。

相続人に対する贈与は、年数に関係なく(いつ贈与があったかに関係なく)、遺産分けに加味される可能性があります。

年数に関係なく相続税が課税される、というワケではなく、その贈与の分、相続財産の取り分が減る可能性がある、ということです。

相続人以外に対する贈与については、原則として、このような話は出てきません。

想う相続税理士秘書

遺言がある場合には相続開始前1年・10年

民法(一部抜粋加工)
(遺留分を算定するための財産の価額)
第千四十三条 遺留分を算定するための財産の価額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を控除した額とする。
2 条件付きの権利又は存続期間の不確定な権利は、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従って、その価格を定める。
第千四十四条 贈与は、相続開始前の一年間にしたものに限り、前条の規定によりその価額を算入する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、一年前の日より前にしたものについても、同様とする。
2 第九百四条の規定は、前項に規定する贈与の価額について準用する。
3 相続人に対する贈与についての第一項の規定の適用については、同項中「一年」とあるのは「十年」と、「価額」とあるのは「価額(婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与の価額に限る。)」とする

遺言がある場合、原則として、遺言のとおりに遺産分けをすることができます。

ただし、一定の相続人には「遺留分」という「財産の取り分」が認められています。

その遺留分を計算する際のベースとなる全体の財産(「遺留分算定基礎財産」と言います)の金額には、原則として、相続人以外に対する贈与については相続開始前1年以内、相続人に対する贈与については相続開始前10年以内の各贈与財産も含まれます。

こちらについても、1年以内・10年以内に贈与された財産に相続税が課税される、というワケではなく、その贈与の分、相続財産の取り分が減ったり、お金を渡さなければならなくなる、ということです。

想う相続税理士

「『贈与』じゃなければ遺留分算定基礎財産に含まれない」と考えて、例えば1,000万円の財産の「贈与」を受けるのではなく、その財産を10万円で「購入」したとしても、その差額(トクした分・990万円)が遺留分算定基礎財産に含まれる場合がありますので、ご注意を。

民法(一部抜粋加工)
第千四十五条 負担付贈与がされた場合における第千四十三条第一項に規定する贈与した財産の価額は、その目的の価額から負担の価額を控除した額とする。
2 不相当な対価をもってした有償行為は、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知ってしたものに限り、当該対価を負担の価額とする負担付贈与とみなす。