相続税専門税理士の富山です。
今回は、小規模企業共済契約に係る共済金の相続税申告における取扱いが争われた事例について、お話します。
出典:TAINS(Z272-13773)(一部抜粋加工)
令和4年11月18日判決
小規模企業共済契約に係る共済金の税務上の取扱い
その共済金は、税務上「退職金」として退職所得課税(退職所得控除適用後の1/2課税)の対象となる
判決事例の概要(流れ)
昭和58年12月から平成27年12月まで小規模企業共済契約に係る掛金を納付
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平成19年3月30日に事業廃止
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共済金等の支給を受ける権利は5年間請求されないと時効によって消滅する(小規模企業共済法23条1項)ところ、亡丙は本件共済金請求権を5年間行使しなかったから、消滅時効の期間は経過していたが、機構は、本件共済金請求権の消滅時効の援用をしていないし、消滅時効の期間の経過後も、本件共済契約の掛金の引落しを続け、その納付を受けていたのであり、機構が本件共済金請求権の消滅時効の援用をすることは信義則に反するものというべきである
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平成27年3月◯日相続開始
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平成30年9月26日相続人による共済金の支払請求
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平成30年10月19日共済金支払決定(相続開始後3年経過)
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本件共済金請求権の価額は、本件共済金請求権のうち亡丙の退職所得に該当するとして課税された所得税、市町村民税及び道府県民税の源泉徴収をした後の金額2347万6778円
判決事例のポイント
その後、共済金請求権は行使されていない
掛金の納付(引落し)が継続していたため、時効扱いとされなかった
そのまま相続が開始したので、亡くなった方の相続人は「共済金の支払請求権」という相続財産を取得した
本来、亡くなった方が生前に共済金請求権を行使したとすれば、退職所得(退職金)として所得税等が源泉徴収され、その源泉徴収後の共済金が支払われる
(現在の)独立行政法人中小企業基盤整備機構は、その源泉徴収後の共済金を相続人に支払った
「源泉徴収後の共済金」の金額が、「共済金の支払請求権」として本来の相続財産に該当し、相続税の課税対象となる
想う相続税理士