【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

1つの裁決の中で名義預金認定・生前贈与認定のどちらもあった事例から学ぶ

相続税専門税理士の富山です。

今回は、相続税の申告における名義預金の認定と、生前贈与の認定がどちらもあった裁決事例について、お話します。

出典:TAINS(Z888-2444)(一部抜粋加工)
令和4年2月25日判決


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収入がないのにお金を持っているのはオカシイと税務署は考える

請求人は、請求人の収入の合計額は多く見積もっても約3,600万円であると見込まれるところ、マンション購入資金として本件入金額(マンションの購入資金の一部)のほかに29,108,374円を有し、相続開始日には、請求人に帰属する財産としてマンション及び少なくとも約8,000万円の預金等を有していた。そうすると、請求人は、1億円を超える蓄財をしていたことになり、請求人の収入から見て、更に本件各預金等(本件各請求人名義預貯金等及び本件入金額)の原資までを出捐することができたとは考え難く、本件各預金等の原資を出捐したのは、被相続人であると推認することができる。また、請求人は被相続人から任されてその管理及び運用を行っていたと認められること、更に、本件各預金等又はその原資について被相続人から請求人に対する贈与がされた事実も認められない
以上を総合的に勘案すれば、本件各請求人名義預金等は被相続人に帰属する相続財産であると認めるのが相当である。

「収入がないのにその人名義の預金等がたくさんある」という状態は、税務署の興味を引きます。

「その預金等はその人のモノではないのではないか?」と考えるのです。

税務署は、財産の名義で所有者を判断しません。

「誰が出したお金」により、または、「誰が稼いだお金」により購入されたか、構成されているか、に着目します。

収入がなくても、お金をもらえば(贈与を受ければ)、財産を手に入れることができます。

でもそのためには、贈与が成立していることが要件となりますし、金額によっては贈与税の申告(課税)も必要となります。

贈与が成立していなければ、その財産(今回の事例では預金等)は、お金を(稼いで)出した人(今回の事例では亡くなった方)のモノです。

名義人が自分のモノにしていれば生前贈与により取得したモノとみなされる

上記の預金等は、贈与が成立しておらず、また、その預金等を相続人の方が管理・運用していたとしても、それは亡くなった方から委任を受けていただけ、とされました。

その預金等で相続人の方がマンションを購入した場合、(相続人の方は自分でお金を出していないので)そのマンションは亡くなった方のモノ、ということになるのでしょうか?

本件入金額の原資は被相続人名義の定期預金であるところ、上記と同様に当該定期預金は被相続人に帰属すると認められ、当該定期預金からの払戻金が本件入金額へと推移している。一方、本件入金用口座は、マンションを購入するための内金、その後の税金及び管理費の支払用に請求人が開設し、通帳を管理していた旨申述し、実際にマンションの購入代金、税金及び管理費の支払に用いられていることからすると、本件入金用口座は、請求人に帰属するものと認められる。そして、本件入金額の原資は、平成25年5月20日に本件入金用口座に入金された後、同年6月17日にマンションの購入代金として費消されていることが認められるが、その後、本件入金額が被相続人に返還された事実はない。
以上の事実関係からすると、被相続人に帰属する財産である本件入金額が、マンションの購入資金の一部として、平成25年5月20日に請求人に帰属する本件入金用口座に振込入金されたことは、その時点をもって、請求人の財産の増加があったと認められ、対価を支払わないで利益を受けた場合に該当することになるから、相続税法第9条の規定により、同日に、請求人が本件入金額に相当する金額を被相続人から贈与により取得したものとみなされる
したがって、このことは、本件相続の開始前3年以内に被相続人から請求人が贈与により財産を取得した場合に当たることから、本件入金額は、相続税法第19条第1項の規定により本件相続に係る相続税の課税価格に加算される。

マンションを購入するための口座(本件入金用口座)が相続人の方のモノであれば、そこに入ってきたお金は、相続人の方のモノになる、ということになります。

「相続人の方のモノ=相続人の方のお金」で購入したマンションは、当然、相続人の方のモノです。

相続人の方のモノである口座に、亡くなった方のお金が入金された時に、相続人の方は「タダでお金を手に入れた」という「利益を受けた」ことになりますから、その時に贈与があったものとみなされます。

想う相続税理士

「名義財産」なのか「生前贈与」なのかをきちんと検討・判断して、相続税の申告書を作成しましょう。