相続税専門税理士の富山です。
今回は、夫婦間におけるお金の貸し借りの注意点について、お話します。
夫婦間の契約は簡単に取り消せる
民法(一部抜粋加工)
(夫婦間の契約の取消権)
第七百五十四条 夫婦間でした契約は、婚姻中、いつでも、夫婦の一方からこれを取り消すことができる。ただし、第三者の権利を害することはできない。
夫婦の間で金銭消費貸借契約を結んだとします。
でも、上記の取扱いにより、その契約はいつでも取り消すことができます。
いつでも取り消すことができる契約って、どうなんでしょうか?
税務署は、「お金の貸し借りに見せかけて、贈与なんじゃないの?」と見るかもしれません。
ちゃんと金銭消費貸借契約を結んでも、上記のようなリスクがある、ということです。
しかし、だからと言って、夫婦間で金銭消費貸借契約を結べないかというと、そんなことはありません。
夫婦間で金銭消費貸借契約を結んでいただいて結構です。
重要なのは、それが「見せかけの架空の契約ではない」ということを税務署に疎明できるようにする(そうだと思ってもらえるようにする)努力です。
お金の動きを明確にする
最初のお金の借入、そして、その後の返済を、目に見えるモノにしましょう。
借入・返済は、金融機関の口座を介し、かつ、借りた方は、そのお金をすぐに必要な用途に充当しましょう(それも金融機関の口座を介しましょう)。
配偶者に支払った利息は経費にならない
例えば、妻がネットビジネスを開業したとします。
その開業資金を生計一である夫から借りて、毎月の返済の際、元金と一緒に利息を夫に支払っているとします。
この場合の注意点は、次の3つです。
- 通常、借入金の利息は事業所得の経費になるが、この場合の妻が夫に支払った利息は妻の事業所得の経費にならない
- 夫が妻から受け取った利息収入は、なかったものとされる(確定申告不要)
- 夫が妻に開業資金を貸し付けるため、金融機関から融資を受けている場合、その融資に係る利息は、妻の事業所得の必要経費になる
この取扱いは、下記の所得税法の規定によるモノです。
所得税法(一部抜粋加工)
第56条 事業から対価を受ける親族がある場合の必要経費の特例
居住者と生計を一にする配偶者その他の親族がその居住者の営む不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業に従事したことその他の事由により当該事業から対価の支払を受ける場合には、その対価に相当する金額は、その居住者の当該事業に係る不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上、必要経費に算入しないものとし、かつ、その親族のその対価に係る各種所得の金額の計算上必要経費に算入されるべき金額は、その居住者の当該事業に係る不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上、必要経費に算入する。この場合において、その親族が支払を受けた対価の額及びその親族のその対価に係る各種所得の金額の計算上必要経費に算入されるべき金額は、当該各種所得の金額の計算上ないものとみなす。
想う相続税理士
夫婦と言えども財産は別、という考え方が民法の根底にありますので、ご注意を。
民法(一部抜粋加工)
(夫婦間における財産の帰属)
第七百六十二条 夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産をいう。)とする。
2 夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定する。