【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

相続により事業を承継した場合には消費税の届出にも注意!

相続税専門税理士の富山です。

今回は、相続があった場合の簡易課税制度選択届出書の効力について、お話します。


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消費税についても相続人の方は申告以外に気を付けるべきことがある!

下記の記事の最後で、「亡くなった方が個人事業者だったりした場合には、(所得税だけでなく)消費税の申告についても、お忘れなく!」とお話しました。

相続税の申告も大事だけど亡くなった方の所得税の確定申告も忘れるな!

そして、下記の記事では、相続により事業を承継した相続人の青色申告の承認申請の注意点についてお伝えしました。

相続開始後2ヶ月以内にやらなければならないことがある!

消費税についても、相続により事業を承継した相続人の方にご注意いただきたいことがあります。

亡くなった方の簡易課税制度選択権は相続できない!

消費税(の仕入税額控除)の計算方法には、大きく分けて「本則課税」「簡易課税」の2つがあり、簡易課税(制度)を選択した方が有利な場合(税金が安い場合)があります。

令和6年3月31日に相続が発生した場合には、令和6年4月1日~12月31日の期間の分の消費税については、その亡くなった方の事業を承継した相続人の方が消費税の申告をすることになります。

亡くなった方が事業を営んでいて、消費税の申告について簡易課税を選択していたら、その事業を承継した相続人の消費税の申告も、自動的に簡易課税になるのでしょうか?

消費税法基本通達(一部抜粋加工)
13-1-3の2 相続があった場合の簡易課税制度選択届出書の効力等
相続があった場合における法第37条第1項《中小事業者の仕入れに係る消費税額の控除の特例》の規定の適用は、次のようになるのであるから留意する。
(1)被相続人(亡くなった方)が提出した簡易課税制度選択届出書の効力は、相続により当該被相続人の事業を承継した相続人には及ばない。したがって、当該相続人が法第37条第1項の規定の適用を受けようとするときは、新たに簡易課税制度選択届出書を提出しなければならない。

「(亡くなった方の)簡易課税で申告できる」という権利は相続できません。

相続人の方が、「自分も亡くなった方と同じように、相続があった年から簡易課税で申告したい」と考える場合には、ご自分で簡易課税制度選択届出書を提出しなければならないのです。

相続人の方の簡易課税制度選択届出書の提出期限はいつまで?

それでは、その簡易課税制度選択届出書はいつまでに提出しなければいけないのでしょうか?

(2)事業を営んでいない相続人が相続により被相続人の事業を承継した場合又は個人事業者である相続人が相続により法第37条第1項(簡易課税制度)の規定の適用を受けていた被相続人の事業を承継した場合において、当該相続人が相続があった日の属する課税期間中に簡易課税制度選択届出書を提出したときは、当該課税期間は、令第56条第1項第1号《事業を開始した日の属する課税期間》又は第2号《相続があった日の属する課税期間》に規定する課税期間に該当する。

つまり、その相続があった年の12月31日までに、簡易課税制度選択届出書を提出する必要がある、ということになります。

年末に相続が発生した場合だと12月31日までに提出できないのでは?

上記で、「相続があった年の12月31日までに、簡易課税制度選択届出書を提出する必要がある」とお話しましたが、極端な話、12月31日に相続が発生した場合、その日のうちに届出書を提出するのは、ほぼ不可能だと思いませんか?

このような場合には、

消費税法基本通達(一部抜粋加工)
1-4-16 「やむを得ない事情」の範囲
法第9条第9項《届出書の提出時期に係る特例》に規定する「やむを得ない事情」とは、次に掲げるところによる。
(3) その課税期間の末日前おおむね1月以内に相続があったことにより、当該相続に係る相続人が新たに法第9条第4項の届出書を提出できる個人事業者となった場合

に該当するため、「消費税簡易課税制度選択(不適用)届出に係る特例承認申請書」を提出することにより、承認を受けられれば、翌年の一定の期間内に届出書を提出することができます。

相続人の方が簡易課税制度選択届出書を提出できない場合もある!

しかし、ケースによっては、相続人の方が簡易課税制度選択届出書を提出できない場合があります。

消費税法基本通達(一部抜粋加工)
13-1-3の2 相続があった場合の簡易課税制度選択届出書の効力等
ただし、当該課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円を超え、課税事業者に該当する個人事業者が相続により法第37条第1項(簡易課税制度)の規定の適用を受けていた被相続人の事業を承継した場合の当該課税期間は、令第56条第1項第2号(事業を開始した日の属する課税期間等の範囲)に規定する課税期間には該当しない。

ザックリ言うと、相続人の方ご自身が元々営んでいる事業の売上が大きい場合には、「届出書を提出した事業年度から簡易課税制度選択OK」の規定は適用されない、つまり、相続があった年から簡易課税で申告できない、ということになります。

想う相続税理士

消費税簡易課税制度選択(不適用)届出に係る特例承認書と消費税簡易課税制度選択届出書は一緒に(併せて)提出する必要がありますので、ご注意を。