【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

特定同族会社賃貸物件の土地と建物を別々に相続した場合の小規模宅地等の特例

相続税専門税理士の富山です。

今回は、小規模宅地等の特例における特定同族会社事業用宅地等の適用について、お話します。


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相続税申告における小規模宅地等の特例の趣旨

相続税の計算においては、一定の居住用または事業用の宅地等について、その評価額を80%または50%減額して申告することができる「小規模宅地等の特例」という制度があり、大きくは「①特定事業用宅地等」「②特定同族会社事業用宅地等」「③特定居住用宅地等」「④貸付事業用宅地等」の4つの適用パターンがあります。

親族の方の生活基盤となり得る居住用または事業用の宅地等の評価額が高い場合、それらに対してダイレクトに相続税を課税することで、相続税が払えず、そこから立ち退かなければならなくなり生活基盤を失うことになったり、失わないにしても、その評価額が高いことで相続税も高くなり、その納税資金に充てるために生活資金が失われる、ということがないように、一定の要件を満たしたときは、それらの評価額を減額して相続税を計算することができるようになっています。

特定同族会社事業用宅地等の適用パターン

上記「②特定同族会社事業用宅地等」は、一定の同族会社に、
【1】土地を貸している(その同族会社がその借りた土地の上に建物を建てている)
か、
【2】土地の上の建物を貸している
場合に、その土地について適用ができるパターンです(他にも要件があります)。

上記の【2】の場合で、その土地も建物も亡くなった方が所有していた場合、つまり、土地・建物どちらも相続財産に該当する場合には、土地と建物をセットで相続しなければならないという決まりはありませんから、土地はAさん、建物はBさんが相続する、というケースもあり得ます。

土地も建物も同じ人が相続すると、遺産分けのバランスが崩れるから、分けて相続する、なんて場合もあるでしょう。

この場合(土地と建物を別の人が相続する場合)、小規模宅地等の特例(特定同族会社事業用宅地等)は適用できるのでしょうか?

事業継続要件が満たされていると言えるか?

小規模宅地等の特例は、そのパターンごとにいくつも要件があるのですが、上記のケースでは、「申告期限まで引き続き当該法人の事業の用に供されている」の要件(「事業継続要件」)を満たすのかという点に疑問が生じるかもしれません。

なぜなら、同族会社は建物の所有者であるBから賃借し、土地の所有者であるAは同族会社に土地を貸していないからです。

土地の所有者であるAと同族会社の間にBが入ることにより、「同族会社の事業の用に供されている」とは言えないような感じがします。

しかし、AB間の賃借が使用貸借(無償)で、同族会社が継続してそこで(同じ場所で・同じ形態で)事業をしているのであれば、(その土地が)「引き続き当該法人の事業の用に供されている」の要件は満たすモノと思われます。

想う相続税理士

上記は「相続後(申告期限まで)」の論点、ある意味、出口の論点ですが、入口の論点、つまり、「相続時の論点」において、土地と建物の所有者が異なる場合でも(建物の所有者が同族会社以外の場合でも)、適用可能なケースがあります。

もちろん土地の所有者は亡くなった方ですが(土地が相続財産じゃないと小規模宅地等の特例の話は出てきませんから)、そのケースとは、建物の所有者が亡くなった方の「生計一親族」の場合です。

この場合、土地の所有者(亡くなった方)と建物の所有者(生計一親族)の間の賃借は使用貸借(無償)であることが要件となっています。

したがって、「相続後(申告期限まで)」の論点においても、AB間の賃借が(ABの間柄が「生計別親族」だとしても)使用貸借(無償)であることが要件になるモノと思われます。

そうしないと(有償だと)、AはBからお金を取る、ということになりますので、Aが相続した土地は、Bに貸している土地、ということになり、Bの「又貸し事業」のための土地、ということになってしまうモノと思われます。