相続税専門税理士の富山です。
今回は、相続税について分からないことがあった場合、税務署に相談すれば絶対に正しい回答がもらえるか、ということについて、お話します。
税務署だって間違えることがある
人為による異常な災害又は事故による延滞税の免除について(法令解釈通達)・国税庁HP(一部抜粋加工)
1 誤指導
(1) 要件
次のいずれにも該当すること。
イ 税務職員が納税者(源泉徴収に係る国税の徴収義務者(以下「源泉徴収義務者」という。)を含む。以下同じ。)から十分な資料の提出があったにもかかわらず、納税申告又は源泉徴収(以下「申告等」という。)に関する税法の解釈又は取扱いについての誤った指導(以下「誤指導」という。)を行い、かつ、納税者がその誤指導を信頼したことにより、納付すべき税額の全部又は一部につき申告又は納付することができなかったこと。
(注) 納税者の誤った税法の解釈に基づいてされた申告等につき、事後の税務調査の際、当該誤りを指摘しなかったというだけでは、誤指導には当たらない。
ロ 納税者がその誤指導を信じたことにつき、納税者の責めに帰すべき事由がないこと。
なお、この事由の認定に当たっては、指導時の状況、誤指導の内容及びその程度、納税者の税知識の程度等を総合して判断することに留意すること。
(2) 期間
その誤指導をした日(その日が法定納期限以前のときは法定納期限の翌日とする。)から、納税者が誤指導であることを知った日(そのことを郵便により通知したときは、通常送達されると認められる日とする。)以後7日を経過した日までの期間
上記にあるとおり、税務署の職員の方が「税法の解釈又は取扱いについての誤った指導(「誤指導」)」をすることもあり、そのような場合には、延滞税が免除される場合があります。
税務署に相談する場合に一番やってはいけないのは、自分が欲しい答えに誘導するように、その答えに有利な内容しか伝えないことです。
それは上記の「十分な資料の提出があった」ことにはならないモノと思われます。
上記は、あくまでも「『延滞税』の免除」の話です。
「本税」(「相続税」等の本来納めるべき税金)についての話ではありません。
もし、本税についての課税処分が取り消されるとすれば、それが違法である、ということが要件になるモノと思われますが、「誤指導」は違法になるのでしょうか?
納税者間の課税の公平が最も重要視される
「当該誤指導があったとは認められない」としつつ、「仮に請求人の主張する相談担当職員の誤指導があったとしても」更正の請求(相続税の還付)は認められない、とした裁決があります。
出典:TAINS(F0-3-662)(一部抜粋加工)
平30-10-19裁決
5 なお、租税法律関係では租税法律主義の原則が貫かれるべきであることからすると、信義誠実の原則の適用には、納税者間の平等、公平という要請を犠牲にしてもなお納税者の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような特別な事情が必要であり、少なくとも、税務官庁が納税者に対し信頼の対象となる公的見解を表示したことが不可欠というべきであるが、請求人が主張する誤指導は、税務署の一担当者の回答であって、税務官庁の公的見解の表示とはいえないから、信義誠実の原則を適用すべき場合には当たらない。したがって、本件更正請求は、信義誠実の原則により適法となるものではない。
納税者に対して一応の参考意見を示すものにすぎない
また、相続税ではなく、所得税についての次のような判決もあります。
出典:TAINS(Z271-13555)(一部抜粋加工)
令和3年4月23日判決
6 税務相談において、原告及び相談担当職員がカウンター越しに直立した状態で、原告がA社の概要等を口頭で説明した後に、本件職員は特段の調査を経ずにかつ比較的短時間のうちに本件対価は譲渡所得に当たる旨を回答し、原告が持参した資料は本件職員に対して何ら提示されなかったというものであるところ、このような状況に鑑みれば、相談担当職員の回答の正確性にはおのずと限界があるものであることは客観的にも明らかであるというべきであり、本件回答が税務署長その他責任ある立場にある者の正式な見解の表示であると受け取られるような特段の事情も認められない。したがって、本件更正処分に信義則の法理は適用されない。
「相談者がその指導・助言の内容のとおりに納税申告をした場合にその申告内容を是認することまでをも意味するものではない」「最終的にどのような納税申告をすべきかは納税者の判断と責任に委ねられている」とあります。
想う相続税理士