相続税専門税理士の富山です。
今回は、相続税の申告は税理士に任せれば何もしなくていいか、ということについて、お話します。
相続税の問題から作らなければならない
相続税の計算は複雑です。
税理士試験では、相続税を計算させられます。
既に財産の概要と、遺産分けの内容が決まっていて、それを元に相続税がきちんと計算できるかを問われます。
実務では、この「財産」と「遺産分け」が決まっていません。
まず、この「財産」を確定させ(それ以外にも確定させるものがありますが)、それに基づいて、「遺産分け」を決めて、初めて相続税を計算できることになります。
では、それらを税理士が勝手に決めていいかというと、そんなことはありません。
税理士とお客様のコミュニケーションが重要
税理士は、何も教えてもらわずに、何も決まっていない状態で、相続税を計算することはできません(税理士は神様ではありません)。
財産の内容についてはお客様の方が分かっていますし、遺産分けは相続人間で決めるものです。
とはいえ、お客様はどんなモノが相続税の課税対象になるのか、どんなモノが相続税の計算に影響するのか、なんてご存知ありません。
税理士は、どのようなモノが相続税の計算に関係するのかをお客様にご説明し、お客様にそれを理解していただき、関係する書類等を集めていただくことになります。
遺産分けについては、その遺産分けの内容によって相続税がどのように変わるかをお客様にご説明し、財産によっては特定のどなたかが相続した場合には、特例の対象となるので相続税が安くなる、というようなこともお伝えし、それを踏まえて、遺産分けの話し合いをしていただく必要があります。
ただし、税金が一番安く済む遺産分けが最高の遺産分けかというと、そんなことはありません。
税金が全てではないからです。
お客様が遺産分けをどのようにしたいのか、というご意向を踏まえたアドバイスが必要です。
遺産分けに対する考え方は、お客様によって様々です。
お客様によっては、きちんと等分に分けたい、相続税も同額になるように分けたい、という方がいらっしゃいます。
また、他の相続人の方に多く財産を相続して欲しい、と考える方もいらっしゃいます。
手に入れた財産の金額と税負担に違いが出ることもある
死亡保険金には、
500万円×法定相続人の数
で計算される非課税枠があります。
例えば、法定相続人が長男・二男・三男の3人であれば、
500万円×3人=1,500万円
となります。
長男のみが死亡保険金3,000万円を受け取ったとします。
財産は預貯金6,000万円だけだったので、二男・三男がそれを3,000万円ずつ相続したとします。
この場合、3人とも3,000万円ずつ同じ金額のキャッシュを受け取るワケですが、相続税には差が出ます。
なぜなら、課税対象となる金額が異なるからです。
長男:3,000万円△非課税1,500万円=1,500万円
二男:3,000万円
三男:3,000万円
長男:54万円
二男:108万円
三男:108万円
財産も相続税も同額になるように分けたい、とお考えになっていたのに、上記のような遺産分け・申告になったら大変です。
想う相続税理士