相続税専門税理士の富山です。
今回は、相続人の中に行方不明の方がいる場合の相続税申告について、お話します。
想う相続税理士秘書
遺言がなければ遺産分割協議により遺産分け
相続が発生した場合、その亡くなった方の財産はどのように分けることになるのでしょうか?
遺言があれば、原則として、その遺言の内容のとおりに遺産分けをすることになります。
遺言がなければ、相続人間の話し合い(遺産分割協議)により遺産分けをすることになります。
遺産分割協議は全員の合意が必要
この遺産分割協議を成立させるためには、相続人全員の合意が必要となります。
例えば、相続人が長男Aさん・二男Bさん・三男Cさんの3人である場合、その中の1人でも反対する内容だったら、その遺産分割協議は成立しません(多数決ではありません)。
遺産分割協議をしようとした場合に、行方不明の相続人がいる場合にはどうすればいいのでしょうか?
例えば、三男Cさんが行方不明であるという場合、行方不明である相続人と連絡が取れないのはやむを得ないことなので、残りの長男Aさん・二男Bさんだけで遺産分割協議をすればいい(ができる)のでしょうか?
それとも、三男Cさんが見つかるまでは遺産分割協議は棚上げで、相続税の申告も棚上げになるのでしょうか?
相続税法(一部抜粋)
第27条 相続税の申告書
その相続の開始があつたことを知つた日の翌日から10月以内に申告書を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。
相続税の申告は、その相続の開始があつたことを知った日の翌日から10月以内にしなければなりません。
相続税法(一部抜粋)
第55条 未分割遺産に対する課税
まだ分割されていないときは、各共同相続人又は包括受遺者が民法の規定による相続分又は包括遺贈の割合に従つて当該財産を取得したものとしてその課税価格を計算するものとする。
遺産分けができない(未分割状態の)場合には、原則として法定相続分で財産を取得したものとして相続税の申告をします。
つまり、長男Aさん・二男Bさんは、10ヶ月以内に、全財産の1/3を相続したものとして相続税の申告・納税をしなければなりません。
三男Cさんが「相続の開始があつたことを知」らなければ、10ヶ月のカウントダウンは始まりません。
行方不明である相続人がいる場合の対応策(その1)
民法(一部抜粋)
(失踪の宣告)
第三十条 不在者の生死が七年間明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求により、失踪の宣告をすることができる。
(失踪の宣告の効力)
第三十一条 前条第一項の規定により失踪の宣告を受けた者は同項の期間が満了した時に、死亡したものとみなす。
失踪宣告の手続きにより、三男Cさんが法律上死亡したものとみなされ、その三男Cさんにお子さんなどの代襲相続人がいなければ、長男Aさん・二男Bさんの2人で遺産分割協議を行うことになります(ができます)。
行方不明である相続人がいる場合の対応策(その2)
民法(一部抜粋)
(不在者の財産の管理)
第二十五条 従来の住所又は居所を去った者(以下「不在者」という。)がその財産の管理人(以下この節において単に「管理人」という。)を置かなかったときは、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、その財産の管理について必要な処分を命ずることができる。本人の不在中に管理人の権限が消滅したときも、同様とする。
民法(一部抜粋)
(管理人の権限)
第二十八条 管理人は、第百三条に規定する権限を超える行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得て、その行為をすることができる。不在者の生死が明らかでない場合において、その管理人が不在者が定めた権限を超える行為を必要とするときも、同様とする。
民法(一部抜粋)
(無権代理)
第百十三条 代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない。
2 追認又はその拒絶は、相手方に対してしなければ、その相手方に対抗することができない。ただし、相手方がその事実を知ったときは、この限りでない。
家庭裁判所に「不在者財産管理人」を選任してもらい、家庭裁判所の権限外行為許可を得られれば、その不在者財産管理人が不在者に代わって遺産分割協議に参加することができます(遺産分割協議が可能となります)。
想う相続税理士