相続税専門税理士の富山です。
今回は、亡くなった方の過去の預貯金口座の動きの確認方法について、お話します。
預貯金は亡くなった日の残高を申告すればOK?
相続税は、原則として亡くなった方の亡くなった日時点における財産の金額(時価)を元に計算します。
そのため、預貯金については亡くなった日時点の残高証明書を取得し、それを相続税の申告書に添付するのが通常の取扱いです。
しかし、預貯金は亡くなった日時点の残高だけでなく、過去のお金の動きをチェックしておく必要があります。
なぜなら、預貯金の一部が生前贈与により親族の方などに移転していれば、それは贈与税の課税対象になる場合がありますし、相続で財産を取得した方が、相続開始前3年(順次延長され7年)以内に、亡くなった方からその生前贈与を受けていれば、その生前贈与財産は相続税の課税対象になる場合があるからです。
また、生前贈与ではなくても、例えば預貯金口座からお金が引き出されていれば、それは口座残高の一部が現金に形を変えているワケですから、「現金」として申告しなければならない場合もありますし、他の資産に化けている、例えば自動車を購入しているというような場合には、その自動車を相続財産として計上すべきかを検討する必要があります。
そのような他の相続財産の有無等を確認するためにも、生前の預貯金の動きを確認する必要があるのです。
想う相続税理士秘書
お金を抜かれた後の残高になっている場合もある
また、相続税が出ないようなケースでも、遺産分けをする場合、全財産をきちんと確認する必要があります。
上記で先ほどお話したように、亡くなる前にお金が引き出されていると、それはその預貯金の残高証明書の金額を構成しません。
例えば、父親に1,000万円の預貯金があったとして、亡くなる前にその通帳を管理していた長男が内緒で勝手に400万円のお金を引き出し、死亡日時点では600万円になっていたとします。
死亡日時点の残高証明書に記載される金額は600万円です。
相続人が長男・二男の2人だとすると、兄弟2人で遺産分けをする場合に、この600万円の残高証明書を元に話し合いをしたらどうなるでしょうか?
「平等に300万円ずつ分けっこしよう」という話になったとしたら、長男は先に引き出した400万円だけ余計に財産を取得できる、なんてことになってしまいます。
相続人全員の合意がないと金融機関に教えてもらえない?
このようなことを防ぐためには、過去の預貯金の動きを確認できればいいのですが、通帳を管理していた相続人(上記の例だと長男)がその通帳を見せてくれないという場合もあるでしょう。
また、親族の間柄だったとしても、その力関係や性格などにより「通帳を見せてくれ」と(強く)言えないような場合もあるかもしれません。
そうなると、通帳を管理していた相続人以外の相続人(上記の例だと二男)は手も足も出ないのでしょうか?
実は、このような場合には、金融機関に単独で接触し、過去の取引履歴(口座の動き)の開示を金融機関に請求することができます。
以前は相続人全員の同意がないと請求できないこともあったようですが、現在では最高裁の判決もあり単独での取得が可能です。
一般社団法人全国銀行協会のHPを見ると、
- 登録情報開示申込書(法定相続人用)
- 開示対象者の死亡を証する書類
- 法定相続人であること(続柄等)を証する書類
- 法定相続人の本人確認書類(1種類)
- ( 弁護士等が任意代理人として手続きを行う場合 )委任状と印鑑登録証明書
- 「本人開示・申告手続利用券」
といった書類があれば、手続きが可能です。
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