不動産を共有で相続することの金銭的(相続税額上の)デメリット
不動産を単独で所有していた場合、所有者は自分の好きなように売却や賃貸ができる
不動産を共有で所有する場合、その持分の売買や贈与は可能だが、その不動産全体を売却したり、賃貸しようとした場合、他の共有者の同意が必要となる
つまり、共有の場合にはそのような制約が生じる分、各共有者の共有持分の価値は下がる
実際に第三者である専門業者等に持分を買い取ってもらう場合には、「全体の評価額×共有持分」よりも低い金額になる
ところが、相続税評価においては、そのような価値下落要素は評価額計算上は盛り込まれない
単純に「全体の評価額×共有持分」で評価される
つまり、共有財産は単独所有に比べて財産価値が下がるのに、単独所有と同じ単価で計算されるため、割高な相続税を納めることになる
相続により取得したことにより共有になった場合、共有者がみんな相続人であれば、親族関係にあるため、形式上は共有だが、いざとなったら親族なので足並みが揃い、売ったり貸したりできる、つまり、実質的には単独所有のような自由さがある、だから価値は下がらない、と考える向きもあるだろうが、それは「親族間の関係性がいい」場合であり、そうでない場合には、相手(他の共有者)に気を使わなくてはならず、逆に面倒くさいこともある(金銭的にも精神的にもマイナス)
タワマン節税防止通達による分譲マンション評価改正以前の留意点
「居住用の区分所有財産の評価について(法令解釈通達)」(タワマン節税防止通達)により、分譲マンションの相続税評価については、令和6年以後の相続について改正されている
分譲マンションは、財産評価上、ザックリ言うと家屋と土地に分けられるが、土地は「敷地利用権」と言い、この敷地利用権については
従来の敷地利用権の価額×区分所有補正率
で計算されることになった
この「従来の敷地利用権の価額」は、
「マンションの敷地全体の相続税評価額」×「敷地権の割合」
と計算する
ただし、大きな分譲マンションの場合、その敷地の中に公園があり、その公園については、分譲マンションの住民以外の方も利用できたり、分譲マンションの住民以外の方が、敷地内の通路を通り抜けて使用しているようなケースがあり、敷地全体に占めるそのような「公共公益的施設」の割合が大きくなるパターンがある
そのような場合には、その公共公益的施設部分を面積按分で除外する(評価額に含めない)ことが認められるケースがある
改正により設けられた「評価乖離率」を計算する際のA・B・C・Dの内容を見ると、この論点(公共公益的施設部分の除外)は盛り込まれていないと思われるため、改正後についてもこの論点を失念しないよう、注意が必要(常に適用できるとは限らないが)