相続税専門税理士の富山です。
今回は、相続税対策だけでなく、認知症になったり介護が必要になった場合のことについても事前に検討すべき、ということについて、お話します。
相続前の対応が相続に大きな影響を及ぼす
相続税対策について検討することも重要ですが、その相続を円滑に進めることができるよう、推定被相続人(相続の発生が予想される方)が認知症などのご病気になったり、介護が必要になった場合の対応についても事前に考えておきましょう。
なぜなら、お金がかかるからです(もちろん公的医療保険等によりカバーされる部分もあります)。
親族間で連携して対応する必要があるからです。
ここで禍根を残すと、それが相続に影響するからです。
生前贈与ができなくなり逆に親族がお金を負担することもある
認知症などの影響により、意思能力がなくなったりすると、基本的に贈与ができなくなります。
民法(一部抜粋)
(贈与)
第五百四十九条 贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。
生前贈与などの相続税対策が進めにくくなります。
場合によっては、親族の方が逆にお金を出すケースも出てきます。
お金だけでなく、時間や体力的・精神的な負担もかかります。
その負担についてどう対処していくか、負担されない方はどう報いるか、ということを考える必要があります。
それは相続における遺産分けにダイレクトに影響します。
負担とお金の流れと進め方を明確にしておく
(親族の方がお金を出すにせよ、推定被相続人の方のお金を使うにせよ)お金の負担や支出については、親族間の以心伝心を期待せず、きちんと明朗会計にし、事前に方向性を決めておきましょう。
せっかく介護などに手を尽くされているのに、お金を使い込んだ、等と後から言われないようにするためです。
推定被相続人の方のお金を使う場合、生前に贈与を受けて(親族のお金とした後に)それを充てるのか、推定被相続人のお金を(預かって)それを使うのかを明確にしておき、万が一、税務署に質問されても、きちんと回答できるようにしておきましょう。
贈与されたお金を使うのであれば、相続税の課税対象にならない場合もあれば生前贈与加算によりなる場合もあり、推定被相続人のお金を使うのであれば、残ったお金が相続財産となります。
民間の介護保険を活用する
民間の生命保険会社が提供する介護保険を活用するという手もあります。
国税庁HP・質疑応答事例(一部抜粋)
疾病により重度障害となった者以外の親族が保険金の支払を受けた場合
所得税法施行令第30条第1号《非課税とされる保険金、損害賠償金等》の規定により非課税とされる「身体の傷害に基因して支払を受けるもの」は、自己の身体の傷害に基因して支払を受けるものをいいますが、その支払を受ける者と身体に傷害を受けた者とが異なる場合であっても、その支払を受ける者がその身体に傷害を受けた者の配偶者若しくは直系血族又は生計を一にするその他の親族であるときは、その保険金又は給付金についても同号の規定の適用があるものとして取り扱っています(所得税基本通達9-20)。
上記にあるとおり(上記は高度障害保険金についての話ですが、基本的には同じです)、その介護保険金を被保険者の方が受け取っても非課税ですし、一定の親族の方が受け取っても非課税となります。
想う相続税理士